Short Stories

□涙歌
1ページ/1ページ






    私の声届いてる?
    私の歌届いてる?

      あの日
   伝えられなかったこと

    この詩に乗せて
  今すぐ君に伝えるから…‥









 
 
 
 
 







――カチャ…‥


長い階段を登り切り、古い年期の入った扉を開けた。

今まで、室内にいたのでより一層陽射しが眩しく思わず一回、目を伏せるといつもの場所に向かう。














心地よい風が辺り一帯に吹き抜けるといつもの場所に腰を下ろす。
そして、肩に担いでいたギターケースを開けて、中から取り出すといつものようにギター片手に歌い出した。




過ぎてゆく時の中

貪欲な心
間接的な偽善

この色褪せた世界に
君は何を望むの?





楽譜なんてない。
いつものように思ったことを言葉にしてギターの音に合わせて歌うその繰り返しの毎日。











「〜…、………」



不意に、人の気配がしたので歌うのをやめて後ろを振り向く。



「ごめん。邪魔する気はなかったんだ」



綺麗な顔をした人がいた。
だが、興味がないのでまたギターを弾く。すると隣に座ってきた。



「歌、上手なんだね」


「…………」



突然、お世辞を言われたので一応お礼言っとくべきかな?と考えているとまた話しかけられる。



「いつも此処で歌っているの?」



まぁ、昼休みはいつも此処にくるけど



「…人に聞かせたくて歌っている訳じゃないから」


「そうなんだ」



悲しそうな顔をされた。
あれ、私もしかして、気に障るようなこと言った?と悩んでいると段々興味がなくなってきたのでまたギターを弾く。










――キーコンカンーコン


昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、とりあえず持っているギターをケースにしまい込んでいると変なことを言われた。



「また、来てもいいかな?」



この屋上は、私の物じゃないからべつに私に許可取る必要はないと思うけど、



「…べつに、好きにすれば」



一応、聞かれたので答えてみた。
ギターの入っているケースを肩に担ぐと扉に向かう。









「ありがとう」



扉に手をかけた時、彼にお礼を言われた。後ろを振り返ると柔らかい表情で微笑んでいる。



「…?」



なんかお礼言われるような事したっけ?と思いつつも興味がないのでそのまま屋上を後にした。















(‥…―これが)
(私と彼との初めての出会い)


     Larme Chanson







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ