Birthstone
□レッド・スピネル
1ページ/1ページ
「――、―なにコレ?」
テーブルの上に置かれたソレ。
指を指し出来るだけ優しく尋ねると目の前にいる人物はさらに身を縮こませた。
「なにコレ?」
「…………。」
答を促してもいっこうにしゃべる気配がない。進まない会話に、ため息をつくとビクッと肩を大きく揺らした彼。
「なにコレ」
「っ、‥…―ざる」
「聞こえない。はっきり言って」
今の彼には強い口調に感じるかもしれない。けど、聞こえないから聞こえないと言ったまで。すると彼は恐る恐る小さな声で呟いた。
「‥…いただいたのでござる」
「誰に」
「…歩いていたご老体から」
怒っているわけじゃない。
そういうと嘘になるが、いま私が彼に抱いているのは呆れだ。
「返してきなさい」
「っ!なぜ故!?」
「いいから、返してきなさい」
知らない人からモノを貰うな。
幼い頃から習っていたはずなのに大の大人がそれもこんなモノを。
「大切なモノ故、貴方に貰ってほしいと頼まれたのだ!それを返せとは無下なること…‥」
聞けば、道を歩いていたら突然に知らない老人に話しかけられ、そのあまりの真剣さに快く了承したらしい。
「本当に大切なモノなら、見ず知らずの人に、それもただであげるわけないでしょ」
「だが、あのご老体は!」
「それに」
犬とか猫なら、どんなによかったことだろう。もらいてなら探せたし、自分で育てることもできた。
だけどコレは
「あからさま、封印ってお札が貼ってあるじゃない!」
駆り失せる好奇心
(とりあえず、老人が見つからなかったら神社に持っていこう)