Birthstone
□イエロー・ゴールド
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魔女は『悪魔と盟約を結んで悪魔に臣従し、その代償として悪魔の魔力を与えられ、超自然的な妖術を行うことができる』ものとされる。『魔女の槌』より
いったい
彼女が何をしたのだろうか
「これより、数多の疫病と戦乱を引き起こした一人。
この魔女の処刑を執り行う!」
沸き上がる群衆の歓声。
その群衆の上にそびえ立つ十字架にくくり縛られる最愛の妹。
数日前まで一緒に笑ってたのに
戦争とは無縁の小さな村の農家で貧しいながらもみんなで支え合って生きてきた。
数日後には、妹の婚儀が控えていて家族だけでなく、村の人々も喜んでくれて、これから輝かしい未来が待っていたのに…‥。
それなのに、
「火を点けろ!」
掛け声と共に火が点けられた。
「やめて!」と悲鳴ような声で叫んでも、さらに群衆の歓声が沸き上がり掻き消される。
妹は誰よりも心優しい。
聖職者が言っていた疫病や戦乱を起こすなんて、妹ができるわけがない。…なのに、
「ど、うして…‥」
どうして妹に魔女の烙印が…‥。どうして、
どうして…‥
いくら考えても、答えが出るはずもなく、鼻をかすめるのは鉄のにおいと焼き焦げるにおいだけ。
「――、―――」
徐々に、妹の姿が燃え上がる炎によって見えなくなるたび、さらに沸き上がる歓声の中、
たしかに、聞こえた。
数々の妹を魔女だと罵り声でなく狂気に満ちた嗤(わら)い声を。
一度、意識してしまえばその声ははっきりと聞こえる。
──若い女の嗤い声。
今だ、止むことがないその嗤い声がする方に顔を向ける。そして、声の主を眼で捉えると周囲も気にせず押し倒し馬乗りになった。
「なぜ、嗤ってる?」
相手の胸倉を掴み、問い掛ける。きっと、今の自分なら眼だけで殺せるだろう。自然に出た地を這うような低い声でもう一度、問う。
「なぜ、お前が嗤っているっ!!」
胸倉を掴んでいる手が怒りで震えるぐらい、自分の気持ちを抑え切れなかった。
だって
私には、わからないから
女は声を出して嗤うのは止めたが口元は歪んでいる。
なぜ
お前は妹をみて嘲笑う?
妹と親友だったお前が
「やっぱり、
アイツは魔女だったのよ!」
どうしてそんなことをいう?
妹が、奴らに連れた行かれた日お前は泣いていたじゃないか
「聖職者様が、村にきてアイツを連れて行った時は、
涙が出るほど嬉しかった!」
妹の結婚が決まった日、お前は誰よりも喜んでいたじゃないか
「結婚だってそう、あの人は騙されていたのよ。あの魔女に。
そうでなきゃ、あの人がアイツのことを好きになるわけない!」
とても、嬉しそうに嗤う。
瞳に焼かれいる妹を写しながら。
「聖職者様に進言してよかった!これで、あの人はあの魔女の呪いから解放される!」
…狂っている。そう思う、同時にとても、かわいそうな人だ。
「進言した?」
「そうよ。となり街の聖職者様に『村に魔女がいる』って進言したら、すぐに村まで来てくれた!」
本当に、かわいそうな人。
友情も心さえも無くして、残ったのは報われぬ想いに命の罪だけ。
哀れな女だが、一つ感謝しよう
この女のおかげで
わかったことがあるのだから。
教会の奴らは、魔女を捕まえるためなら、人の噂や密告だけで逮捕し、裁判にかけることがね。
「フフ…‥ありがとう」
胸倉を掴んでいる手を離すとこの女から退く。
そして、ゆっくりと、今はもう人の姿(かたち)をしていない妹だったそれ、炭と化したモノを見上げると静かに決意した。
ねぇ、聞こえてる…‥?
貴女は自分の無罪がわかっただけでこの女を赦すでしょう?
この女を怨みもしないでしょう?
ごめんね
私はできた人間ではないから
先ずは
この哀れな女を、妹と同じように魔女に仕立て上げよう
妹と同じ苦しみを
いや、それ以上の苦しみを
その為には
悪魔に懇願しなければ
たとえ、悪魔に魂を売ろうと
たとえ、悪魔に躯を売ろうと
数多の犠牲が出ようと必ず叶える
悪魔崇拝
それが終わったら、
腐敗した聖職者に永遠の眠りを