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□教えて!先生!(未完)
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大学のつまらない講義を聞きながら、三橋が俺を意識するようになった原因でもある半年前の「事件」を思い出す。


その日、阿部はいつものように三橋の家へ向かっていた。
駅を降りて改札をくぐり、三橋の家へ向かう。
すると、大通りから外れた一本狭い道の前を横切ったとき、見知ったフワフワ頭と見知らぬ2人の金髪頭を見つけた。
「なぁ?いいじゃん。これから一緒に遊ぼうよ?」
「俺らと来ると楽しいとこいっぱい教えてあげるよ?」
「あ、あの…今から 予定、あるので…。」
「そんなのフケちゃいなよ。さ、行こ行こ。」
三橋の肩に手を回しながら、男たちはさらに奥の道に進もうとしていた。
三橋が上手く切り抜けられない状態であることを悟るや否や、阿部は頭で考えるよりも先に体が動いていた。
「オイ、こんなとこに居たのかよ、行くぞ。」
三橋の手をギュっと掴み、その行く手を阻む。
「あっ…阿部せんせっ!」
泣きそうな顔のまま振り向く三橋に、阿部は安堵しながら自分の方に引き寄せようとする。
「おい。あんた誰だよ?」
それを男たちが邪魔するようにさらに三橋へ接触した。
「コイツ俺の連れなんだ。悪いけど返してもらうから。」
阿部がもう一度、男達から三橋を引き離そうとすると、男はさらに三橋を抱えるようにしながら反論する。
「俺らが先だったんだぜ、この子も俺らに付き合いたいってさ。」
あざ笑いながら三橋を連れて行こうとする男たちと、涙目で訴えてくる三橋を見て、阿部はついにブチ切れた。
「どうみても嫌がってんだろ。離せ、よっ。」
ドカッ。
最後の言葉と同時に、三橋に当たらないスレスレのところで男に殴りかかる。
「んだよ、この野郎!」
もう一人の男がすかさず反撃してくるのをサッとかわしながら、カウンターで攻撃をしかける。
2人がひるんだところですかさず三橋を取り戻し、引っ張りながらその場から逃げ出した。

「ここまで来りゃ大丈夫だろ。」
少し離れたビル影に隠れ、辺りの様子を伺うが男たちの追っ手や仲間は居ないようだった。
一息ついたところで、自分が三橋を抱え込むような体勢であることに気付く。
「おっ、わり…。」
慌てて三橋を離すが、その時三橋が真っ赤になっていることに、阿部は気付いていなかった。

ただ、三橋を助けたかっただけ。このときの阿部の行動に他意はなかった。
しかし、それまで三橋に積もり積もっていたものが、この事件をきっかけに溢れ出したと言うことは阿部にも十分予想が出来ていた。


きっと、三橋は自分を好きなんだろう。
その三橋から向けられた恋心に戸惑いながら、今日も三橋の家に向かった。
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