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□教えて!先生!(未完)
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ふー…と深いため息をつき、目の前の大きな玄関のインターホンを押す。

ピンポーンという音の後に、パタパタという足あとが聞こえてくる。
「はっ、はーい。今、あけまーす。」
ガチャッ。
「い、いらっしゃい先生。」
その扉を開けた少女は、少し息を切らしながらも、ふんわりとした笑顔をその人物に向ける。
「おう。」
軽く手を挙げて挨拶しながら、阿部はその扉をくぐった。

「さて、今日は何からやるんだ?数学?英語?」
「うんと、明日数学の小テストあるんだ。だから、それの復習しても、いいですか?」
「よし、じゃあ始めっか。」
「はい。」
元気な返事とともに、教科書を開いて勉強を開始していく。
さっそく行き詰った三橋に、阿部は三橋の理解できるように分かりやすく説明して言った。

その視線が出てくるのは、いつも勉強を始めて数十分、三橋の集中力が落ち始めるときだった。
「…三橋、手止まってる。分かんないところがあるなら、口で言わなきゃ分からないっつってるだろ?」
「はわっ!はっはひ!」
三橋自身も、自分がボーッと阿部を見つめていることに気付き、慌てて作業に戻る。
その後の空気は、阿部にとって常に居心地の悪いものだった。

三橋の家庭教師を始めてからもうすぐ1年、そのただならぬ空気が醸し出されるようになってから半年、阿部は最近三橋との間に流れる気まずい空気に耐えかねていた。

『こいつが俺にただならぬ感情を抱いてるのは…確かなんだよなぁ』
阿部は、いそいそと問題に取り掛かる三橋を見ながら気付かれないようにため息をついた。
最初は、ふとした瞬間に目があった。それだけならまだしも、何回も訪れているうちに三橋は俺を見続けることを隠そうともしなくなった。
三橋が阿部を好きになるのに、特に思い当たる節はなかった。
ただ、家庭教師のバイトの派遣としてここにたまたま選ばれただけ。
三橋の横顔を見ながら考えを張り巡らせていると、「できました。」という声とともに阿部は現実に引き戻される。
「確認するぞ。」
阿部は、恋愛について自問自答するヘタレな男から、数学を教える家庭教師へ一瞬で戻っていった。
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