その他
□流れゆく時の中で
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ーーーしんしんと音もなく舞い降り、降り積もる雪。争いなどまるで無かったかのように真っ白く塗りつぶすかのように降り続ける。
その中に男が探し続けたものがあった。男はそれに近寄ると持ち帰った。
イブの生まれ変わりーーー
この魂は覚えているだろうか?
冷たい雪の中にいたせいか、子供の体は冷たく、ピクリとも動かない。男は、ほおに手を当てると小さな手がゆっくりと男の指先を握ってきた。
そのぬくもりに男は小さく笑みをうかべ、昔と同じく自分を包み込むぬくもりに心地よさを感じた。
ここはどこだろう?
目を覚ました子供は見覚えのない部屋をキョロキョロと見回した。
とても暖かい夢と、とても悲しい夢を同時みていた気がするのにどちらも思い出せない。
ガチャリ
扉が開き、背の高い銀髪の男が入ってきた。男はベッドにいる子供に近づく。
「起きたのならば、これを飲むといい。」
男は手に持っていたミルクを差し出す。子供は男とコップに視線を一往復させる。男はそんな子供に頷き、飲むように促す。子供はそれを見て首を縦にふると湯気が立つコップの縁に唇を当てた。
こくりっと小さな喉が上下したのを確認すると男は口を開いた。
「お前の名は?」
子供は一拍置いて答えた。
「・・・ていと。」
「……テイトか。」
確かめるように呟く。
「私は、アヤナミだ。」
「あやなみ?」
大きな瞳でアヤナミの紫の瞳を覗き込む。アヤナミもテイトの瞳を覗き込めば、大きな瞳に映し出されるのは自分自身。
「……そうだ。アヤナミだ。」