その他
□ウタカタノユメ
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ーーそこは真っ白な花が咲き乱れるところだった。
そこにいるのは自分ともう一人だけ。隣に座る男は優しく髪撫でるとおもむろに自分の髪を手に絡め、愛おしそうに口づけた。
男の顔を見ようと振り返る。
はっと目を覚ますと、そこにあるのは宿の天井だった。
最近よく見る夢は決まっていてそれを見る度、心が締め付けられる。知らずに涙を零していることもあった。
あれは誰なのだろう?
自分に触れる男の顔を見ようすると、何故か霞みがかってよく見えない。よく、見知った顔のような気がする……
旅も終わりに近づき、徐々にでは昔の記憶も戻りつつあるものの夢の正体はわからない。
大切なもののはずなのに……
テイトはゆっくりと起き上がり、窓際に寄ると窓ガラスに触れた。
冷たく硬質な感触が指先から身体の内側へと染み渡る。窓ガラスに映る室内を見渡せば、ベッドで眠りについているフラウがいた。
この街に来てからフラウの口数は極端に少なくなり、必要なこと以外は全く喋らなかった。
しばらく、窓ガラスからフラウを見つめていると、声が響いた。
「もう、起きてんのか?」
眠っているのだと思っていたが、どうやら起きていたらしい。
フラウは起き上がり、テイトの近づくと窓の外へと視線を向けた。
「そろそろ、行くか。」
「うん。」
街の中をテイトとフラウは一緒に歩く、
しかし、どちらも会話がなかった。
今朝、フラウはテイトが起きる前から目が覚めていた。
初めてテイトを見た時、一筋の光だと思った。
闇の淵でもがき続けるたった一筋の光。
深い闇をも照らし出す光。
テイトを愛おしく想う、と同時に自分のものにしてしまいたいという狂気にも似た感情を次第に持つようになっていた。
死神の鎌はテイトを喰らおうとする。
最近はその死神の狂気を抑えられない。
最近では、元々自分の奥底にあった願望なのかもしれないと思うようになり、もはや鎌の狂気か自分の狂気かわからない。
テイトに触れてしまえば、壊れてしまう。
そんな気がするのだ。