ほのぼの・甘
□お気に入りの場所
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ーー優しい風が吹き、サラサラと漆黒の髪が揺れていた。
その日は朝から忙しく、息つく暇もないほどだった。
「テイト、私たちは会議に行く。あとを頼むぞ。」
午後からアヤナミたちは会議があり、テイト以外のメンバーは全員出席することになっていて、テイトは一人留守番をすることになっていた。
会議までに仕事を片付けるため忙しかったが、あとは書類をファイルに纏めるだけだった。
「……よしっ。これで終わりっと。」
誰もいない室内は静かで、いつもの騒々しさが嘘のようだ。
「……だれも、……誰もいないんだよな。」
ぽつりと呟いてもシーンと静まり返り、何も返ってこない。
何だかとても不思議な気分だった。とりあえず、いすの上で膝を丸め、体育座りをしてみる。
「……そうだ!!」
テイトは急に立ち上がると掃除道具がある場所に向かった。
テイトは、掃除道具を手に持ち、時間を潰すため掃除を始めた。
高いところから埃を落とし、一人一人の机を丁寧に磨いて行く。最後に床をモップで拭いた。
「よしっ、と。……みんな遅いなぁ。」
時計の針はとっくに二回りしていた。掃除道具も片付け終わり、やることも特にない。
ふと、視線を向けるとアヤナミの机が目に入った。しばらく、じぃーと見つめているとぽつりと呟いた。
「誰もいないんだよな。」
先ほども確認したのに再度確認し、さらに辺りをキョロキョロと見回した。
テイトは、立ち上がるとアヤナミの席に向かい、椅子に座った。
「アヤナミ様の椅子。」
自分の物より数段良いものだが、所詮は椅子だと言うのに胸がドキドキと高鳴った。
何か、あったかい。
アヤナミ様に包まれてるみたいだ。
アヤナミの椅子の心地よさに、いつしか眠ってしまっていた。