シリアス・甘
□目覚め
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やわらかな月明かりが、長い眠りについていた少年を優しく起こす。
「・・・っ。・・・ん・・・。」
部屋の中央のベッドで、眠っていた少年が目を覚ました。
「えっと・・・」
キョロキョロと辺りを見回し、考え込んでいると、
カチャリ。
室内をロックしていた扉が開き、男が入ってきた。
「・・・起きたのか。具合はどうだ?覚えているか?」
男は、ベッドの近くにある椅子に腰掛け、少年に尋ねる。
「アヤナミ様、体はもう全然大丈夫です。えっと、確か俺は任務中に倒れてしまって・・・」
「そうだ。テイトお前は、任務中に倒れた。目を覚まさないので心配したが、大丈夫そうだな。」
記憶を封じ、その上に嘘で塗り固めた偽りの記憶。
すり替ったことに気づかない少年。
そんな少年をみてアヤナミは、密かに安堵し、自分を見つめる瞳が微かに沈んでいることに気づいた。
「どうした?何を考えている?」
・・・。
返事が返ってこないので、じっと待っていればポツポツと話し出した。
「・・・俺、・・・足手まといなのかなと思って。いつも、アヤナミ様に迷惑ばかりかけてしまって・・・そう考えたら、ちょっと・・・」
話しているうちに、どんどんと嫌な考えしか浮かんでこない。
もしかしたら、アヤナミはこんな自分を要らない、必要ないと捨ててしまうのではないかと思うと不安でたまらない。
暗い考えにとらわれて目をぎゅっと瞑る。
ふいに頭の上に手を乗せられそのまま優しく撫でられた。
「私は、お前を捨てたりなどしない。」
普段は、無機質で冷たい瞳が今は優しく温かい光を含んでいることに安心する。
(けど・・・。何か、違う気がする。うまく言えないけど・・・うれしいのに、しっくりとこない。違和感を感じるのはなぜ?)
からだの記憶は違和感を感じていた。