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骸雲/甘い




‡蜜と果汁と‡


「キス、をしたいのですが。」

突拍子のないことを、真剣な眼差しで発した骸。
「…は?」

いつもより近い距離。
微かに半袖のTシャツから汗の染みた匂いとさっき食べていたチョコレートの匂いが混ざった感じがした。

「…ちょ、嫌」

とすん、と胸板を軽く押して拒絶する。

けれども、骸は華奢な腕を回して僕の腰をつかむ。

「恭弥は僕とキスしたくないんですか?」

そりゃあ…
したいかもしれないけれど。

「…。」

応じずにいると、骸は僕の頬に触れ、鎖骨に触れ、そして口元に触れ、ゆっくりと近づく。
息づかいが耳元でする。初めてこんなに意識して、どきまぎした。

Tシャツからの匂いに犯されて、感じてしまう。
「ちょっと…。」

困るように見上げると、
「もう…1ヶ月も経つじゃないですか…」

言われて気づく、

「あ…っ」

「僕だって男なんです。少しくらい…いいでしょう?」

雄の匂い。
僕は雌のように唇を引き寄せられて、少し強引に唇を重ねた。

瞬間、蜜のような狂うなにかが僕のなかに入ってきて、浸食し始める。

「く、るし」

いつもにない力の強さで骸は引き下がろうとしない。

「ね、い…や」

僕はふいに涙を一筋おとした。
すると、
骸はゆっきり引き離した
一筋の糸だけがまだ紡いでいた。

「ごめん、なさい」

口元を指で拭われて、骸の匂いが僕と重なった。
「…恭弥」

骸はなんともいえない顔で見つめてくる。

「…なに?」

「だい、す…きなんです。」

「知ってる…よ?」

「大好きなんです。本当に。」

だから…
だから。骸は笑んだ。

「だから…これからもよろしくお願いしますね、恋人さん」

「うん…」

初めてのキス。
それは少し果汁のように溢れ出し、蜜のようなとろけるキスだった。

ねえ、骸。

愛を、ありがとう…
これからもよろしくね



fin.


むくひっと感謝!
ちよこれいど

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