6900hit(むくひっと)
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骸雲/甘い
‡蜜と果汁と‡
「キス、をしたいのですが。」
突拍子のないことを、真剣な眼差しで発した骸。
「…は?」
いつもより近い距離。
微かに半袖のTシャツから汗の染みた匂いとさっき食べていたチョコレートの匂いが混ざった感じがした。
「…ちょ、嫌」
とすん、と胸板を軽く押して拒絶する。
けれども、骸は華奢な腕を回して僕の腰をつかむ。
「恭弥は僕とキスしたくないんですか?」
そりゃあ…
したいかもしれないけれど。
「…。」
応じずにいると、骸は僕の頬に触れ、鎖骨に触れ、そして口元に触れ、ゆっくりと近づく。
息づかいが耳元でする。初めてこんなに意識して、どきまぎした。
Tシャツからの匂いに犯されて、感じてしまう。
「ちょっと…。」
困るように見上げると、
「もう…1ヶ月も経つじゃないですか…」
言われて気づく、
「あ…っ」
「僕だって男なんです。少しくらい…いいでしょう?」
雄の匂い。
僕は雌のように唇を引き寄せられて、少し強引に唇を重ねた。
瞬間、蜜のような狂うなにかが僕のなかに入ってきて、浸食し始める。
「く、るし」
いつもにない力の強さで骸は引き下がろうとしない。
「ね、い…や」
僕はふいに涙を一筋おとした。
すると、
骸はゆっきり引き離した
一筋の糸だけがまだ紡いでいた。
「ごめん、なさい」
口元を指で拭われて、骸の匂いが僕と重なった。
「…恭弥」
骸はなんともいえない顔で見つめてくる。
「…なに?」
「だい、す…きなんです。」
「知ってる…よ?」
「大好きなんです。本当に。」
だから…
だから。骸は笑んだ。
「だから…これからもよろしくお願いしますね、恋人さん」
「うん…」
初めてのキス。
それは少し果汁のように溢れ出し、蜜のようなとろけるキスだった。
ねえ、骸。
愛を、ありがとう…
これからもよろしくね
fin.
むくひっと感謝!
ちよこれいど