ニックネームは
ある日の昼下がり。
特に用事があるわけでもないのに、私は秋山さんの家にお邪魔していた。
秋山さんはコーヒー、私はココアを飲みながら、たわいもない話をする。
その時、ふと思った。
「秋山さん、ニックネームで呼ばれるとしたらどんなのが良いですか?」
「…ニックネーム?」
―突然彼女がそんなことを言うので、驚いた。母や友達には何と呼ばれていただろうか。
普通に下の名前だった気がする。
ニックネームになっていない気がするが、下の名前をそのまま言うことにした。
「…しん、」
「“しんちゃん”ですか!!」
「(しんちゃん!?)」
“しんちゃん”と言われるなんて思ってもみなかったので思わず笑ってしまった。
「あっ!何で笑ってるんですかー!!しんちゃんって可愛いじゃないですか!」
「いや、可愛いけど。まず俺に似合ってないじゃないか」
「えーそうですか?うーん…あ、“しんたろう”!!」
「名前自体変わってるだろ、それ」
それじゃあ、と彼女は考える。
「…しんしん」
コーヒーを吹き出しそうになるのを堪えたが、それでも口角は上がる。
「あっ!!気に入ってくれました?」
彼女は満面の笑みでそう言った。
ニックネームは
(じゃあ次のゲームの時もそうやって呼んでいいですか!?)(…返事しないぞ)(何でですかぁっ!!)
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