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□願い事
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(今日は一段と騒がしいな…)
大学内を歩く容姿端麗和風美人、誰もが振り向くその人、神田ユウ。
中庭を通り過ぎる際、何故か今日は生徒達がざわめいていた。
特に中心となっているのが女性…それも彼氏募集中のレッテルを掲げている生徒。
よくよく見れば行き交う人達は皆、青や黄色、緑等の短冊を持っているではないか。
(七夕か。道理で笹が置いてある訳だ)
目の前にある中庭の噴水前に、大きな笹が立て掛けてある。
思い思いに書いた文章を笹に吊し、願い事をするなんて馬鹿馬鹿しくて不確的要素に縋る程愚かしい物はない。
つまらなさそうに踵を返した神田の前に、へらっとした奴が立っていた。
「おっす!ユウも願い事しに来たんさ?」
「そうだな…年中発情右目眼帯馬鹿兎は早く死ねって書いてやったぞ」
「…酷ぇさ」
「黙れ、死ね」
傷ついたと嘆くラビを捨て置き、神田はさっさと中庭を後にする。
しかし神田の親友(自称)のラビはすぐに立ち直り、神田の横に並んで歩き始めた。
「ユ〜ウ〜!短冊に何か書かないんさ?」
「阿呆か。あんな紙切れに頼って何になる。他力本願もいいとこじゃねぇか」
「それを言っちゃオシマイさ!夢の無い事言うなよっ!」
「俺に夢などは無い。あるのは信念だけだ」
そう、神田の信念は確固たるもの。
それは夢などの幻想ではなく、自分の力で何とかしなければいけないのだ。
どんな信念?と聞く前に授業が始まった為、ラビは大人しく席に着いた。