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□残念ながら、ベタ惚れ
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落ち零れは、どんな学校にも必ず一人はいるものだ。程度に差はあれど。
「………………ウォーカー」
此所は都内でも有数の私立学園であり、某T大学への進学率は全国でも1、2を争う超進学校である。何が凄いって人口が凄い。所謂マンモス校だ。
しかしどのクラスもどの学年も一定の偏差値をキープしているからといって、足して割っての平均値である為、全員が平均を越すわけでは決してない。
例えばそう、彼女の様に。
「………起きろっつってんだこのくそ餓鬼がぁッ!!」
今年教師就任二年目、数学教諭神田ユウその人を超越した様な容姿で女生徒の人気を一身に集める彼は今、たった一人の生徒の為に激怒していた。
「うっさいですよ先生……僕夜勤開けなんですから…」
「関係あるかっ!学生の本分は学業だ!!大体俺の授業を突っ伏して受けるなんざ、いい度胸してんな?あ ぁ?」
「安心してください。貴方の授業だけじゃなくて、皆の授業を満遍なく寝てますから!」
「胸を張るなそれが一番の問題なんだ馬鹿たれぇええ!!!」
此所はいうなれば、落ち零れクラス。それでも十分著名な国立大学への道は約束されている頭の持ち主ばかりなのだが、彼女…落ち零れクラスの落ち零れ、アレン ウォーカーだけは別格である。
成績表はアヒルの行列、時々電柱。体育だけ5という、典型的なおつむの弱い少女である。
あろう事か現理事長の姪っ子で、この超絶美貌の持ち主の婚約者であったりするのだが。
「てめっ、次の中間で赤点でもとってみろ!吊しあげんぞ!!」「ごめんなさい、僕SMプレイには興味ないんで」
「そういう意味なわけあるかぁああ!!!」クラス中が「ああ、また始まった」と頭を抱えた。
彼女と彼の言い合い小競り合いは今に始まった事ではないのだ。いつからか誰ともなく耳栓を持ち出し、自主学習に励む様になる程ほぼ毎日繰り返される、痴話喧嘩。
巻き込まれたら厄介なので誰も何も口をださない。
アレンといい神田といい、本人達が頓着している様子はないが、傍から見れば見目麗しい少女と青年だ。注目の的になっても仕方はあるまい。
だが誰もちゃちゃをいれないのは、それこそ傍から見ればただのバカップルでしかないからである。この学校の7不思議を8不思議に変えた彼らの痴話喧嘩なんかに、首なんか突っ込んでへし折られでもしたら。
考えただけでも悍ましい。
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