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□師匠と弟子の恋模様
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(あれは・・・人、か?)
任務を終えた神田は、イギリス郊外にある丘の近くを通りかかった。
その丘の頂上に1つだけある墓石に寄り添うように凭れる影があり、神田は近付いて声をかけた。
「おい、お前。こんな所にいたら風邪ひくぞ」
「・・・?」
膝をつき、目線を合わせるようにして話しかけると、子供は虚ろな目で神田に焦点を合わせた。
そして神田がふと左腕を見ると、赤く爛れ、手の甲に十字架が埋め込まれているのが目に入った。
そう、これは・・・
「イノ、センスか・・・?」
「ひっ・・・!」
神田が左腕を見ているのに気付いたのか、その子は腕を隠すようにうずくまってしまった。
その痛々しい姿に、神田は全てを悟ると安心させる為頭を撫でた。
「安心しろ。俺はお前を傷つけたりはしない」
「おにいさんは・・・このてをみて、きもちわるいっておもわないの?」
幼いこの子は、腕の事で蔑まれて生きてきたのだろう。
だから訊いてきたのだ。
"気持ち悪くないのか?"と。
大人でも言われればショックを受けるのに、まだ10歳を過ぎたくらいの子供にはさぞかし酷であっただろう。
「お前、俺と一緒に来るか?」
「えっ?でも、こんなうでだし・・・」
「お前の腕は、神に愛された腕だ。だから俺は気にしねぇよ」
「っ!・・ふぇぇ・・・」
優しく手を広げて促すと、泣きながら神田の腕に収まった。
しばらく眠っていなかったのだろう。
背中をさすってやると、神田の団服を掴みながら眠り始めた。
そんな子供を抱き抱え、神田は教団へと急いだ。