present&request

□国の頂上、王と巫女
2ページ/9ページ

(さて。町に出たのはいいが、あいつがどこにいるかだな)

流石は城下町、人の数に比例して店の数も半端無く多い。

アレンがよく食べるとの事で、食べ物を売っている店を虱潰しに探すが、一向に見つかる気配はない。

持ち前の身体能力を生かして町中を走り回るが、いくら神田でも息が上がってくるというもの。

(やはりあそこしかないか…)

町中を駆けずり回り、神田が思い当たる場所は1ヶ所のみ。

神田は、町の裏手にある森へと入っていった。



――――――



神田が目的地に近付くにつれ、緑は鬱蒼と生い茂り、太陽の光を遮っている。

かれこれ20分は歩いただろうか、膝辺りまで伸びた草が無くなり、神田の前に池が姿を現した。

そこは蓮の花が咲き乱れ、蛍が飛んで幻想的な雰囲気を醸し出している。

その池の畔に見知った白い姿を見つけ、神田は再び歩き始めた。

「おい、迎えに来たぞ」
「あ、神田!王様がこんな所で何をしてるんです?」
「そりゃこっちの台詞だ。この国にはお前しか巫女はいねぇんだぞ?それ以前にお前は俺の恋人じゃねぇのか?」
「ははっ!そうですね、ごめんなさい」

神田が城を抜け出すのをキツく叱らないのは、この池に来たアレンが更に美しく感じるからだ。

蛍の光りに囲まれるアレンは、巫女と呼ばれるに相応しい美しさで。

神田はこの先、アレン以外の女を愛する事は無いだろうと思った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ