N o v e l -long-

□First Love -"ごめん"-
2ページ/2ページ

あの哀しそうな寂しそうな声が、忘れられない。
俺がそんな声を出させているんだと思うと、胸が痛む。
もうかれこれ数ヶ月。俺の最低さに呆れて――すぐに離れていくと思っていた彼女は、そうする事はなく。
むしろ更に主張してくる。

けど、本当は絶対ェに苦しいはず。
これ以上そんな思いをさせたくはねえし、嫌われるために取っていた行動だけど――
ここは直接、"ごめん"と断った方が、彼女を傷つけないと判断した。

ナミさん、俺もきみが好きで、あなたも俺が好きで。
それ以上の幸せはねえって思うけど、どうしても俺には恋愛面での愛というものを信じる事ができない。

ナミさん、俺はきみの何人目の男かな。
人の気持ちは、移り行くものだから。――俺の母親が、そうだったように。

これが仲間としての"強い好き"なら、手放しに喜べたのにな。
仲間としての絆ってさ、物凄く強いものじゃねえか。

脆い恋人同士の絆なんかよりも、仲間としての強い絆を…これからも、築いていこうよ。
俺達のためにも。








「ヒ…ック、う…っ」

ナミさんを探しに蜜柑畑へと足を運んだら、堪えるようにすすり泣く、――ナミさんの声。

「ナミさん?」

何も考えずに動いた自分に驚いた。
思わず、というのはこういうことだ。
ここは絶対ェに出ていく場面じゃない。

だって泣いているとすれば、きっとそれは俺の事だ。
そんな当たり前の事は、声をかけてから気づいた。

「…泣いてるの」

でも、好きな女が、目の前で泣いている姿を。…ただ黙って見過ごすなんてことできない。

「俺のせい?」

それと同時に、原因が俺である以上彼女の涙を止める事ができるのだって俺なんだと。

今まで一度も涙を見せることはなかった。
けど、もしかしてこうして影で、隠れて泣いていた?
強い自分だけを見せようとしていたんじゃないだろうか。
ココヤシ村でも、そうだったように。強がりな彼女だから。

なんでこんなにもナミさんは強いのか。
女なのに。俺の前では泣かねえようにしていたんだろう?
…たまにはそうやって、泣く事も大事だ。ナミさんは、いつも強いんだから。

俺のことを諦めさせるためにと運んだ足は、彼女を励ます足に変わってしまっていた。
ナミさんを振る?おい、お前はこれ以上、ナミさんを泣かせる気か?
…たまには弱さを見せて泣く事も大事だけど。

けど。

これ以上、俺の事でナミさんを泣かせる気なのか?



…俺は何をしようとしていた。



ナミさんの涙の、破壊力の強ェ事。

失恋を手伝う。
…そんなこと、俺には出来ねえよ。

「ごめんね」

……俺からはどうしたって、振ることなんてできやしない。
それがどんなに、彼女を悲しませる事になっても。
だから、

「…ごめん」


つらい思いをさせてしまって、ごめん。
早く俺を、振ってください。


「サンジ君…っ、……好き…」

「…うん」






前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ