N o v e l -long-

□First Love -ぶつかる想い。-
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「サンジくんッ!」


勢いよく扉が開いた、俺の名を呼ぶその主は間違いなくナミさん。
こっちが返事をする間もなく彼女はルフィに目を向けると甲板を指差した。


「ルフィ!ちょっと出てて!サンジ君と話があるの!」

「ん?おう、分かった。」


先程まで論争を繰り広げていたのにも関わらずあっさり出ていったルフィを見送り、目の前の彼女を見据えた。
…ああ、いけねえ。陽気になる振りを忘れてた。
今更取り繕っても遅ぇな。

「サンジ君」

それでも習慣というのは恐ろしいもので、話しかけられれば自然と微笑んでしまう。

「何でしょう!」

「ちょっと、それやめて。お互い素で話しましょ」

ああ、やっぱり彼女は勘違いしている。
こっちの俺が、本当の俺に近いんだよ。
…今は、作っているものだけど。

「素で話す話が…あるの?」

でも、きみはこっちの俺を望んでいるようだから。

「ええ」

仰せの通りに。

「何かな」

「…サンジ君、あのね…」


走ってきたのか、まだ整いきっていない息に水をあげた方がいいかな等と呑気な事を考えている。
だって、予想もしていなかったから。ナミさんから出る、次の言葉。


「…あのね、好き。」

「まだ、好きなの」


ひとつ、深呼吸をしてからしっかりとした口調でそう言った。
完全に、もう望みのない男を追いかけるのはやめようという判断に決まったものだと思い込んでいた俺は、
再度この言葉をナミさんの口から聞く事があるとは思いもしていなかった。

もう何度目か分からない彼女からの告白を受け、その時いつもと何かが違うと彼女は俺に思わせた。
――そう思わせたのには、理由があった。

迷いがないのだ。迷いのない、強い色が瞳に宿っていた。
いつもは、どこか申し訳なさそうな、好きでいていいのかなどの戸惑いや不安の色が瞳には表れていた。
むしろ、目を合わせて好きとすら言おうとしなかった時もあった。

――けど。

「…ロビンちゃんか。」

ひとつの結論に達す。
あれ程落ち込んでいた彼女が、ここまでの起死回生を遂げるのには何らかの理由があったに違いない。
そして、もう一度挑んでみようと奮い立たせるまでの何かがあったとしか考えられない。
あんな目に合い、それでもこうして彼女の背中を押す強い理由があるのか?
――と、考えた時に、結論はひとつしか出てこなかった。

彼女の告白に答えるわけでもなく、礼を言うわけでもなく。
たった、一言。

「…うん」

ああ、俺の気持ちはバレちまったのかよ。
あそこまで隠してきた意味がまるでなくなっちまった。

「やっぱり、女は信用ならねえなあ…」

自嘲気味に笑んで言う俺から、ナミさんはずっと視線を外さない。
そんな目で、見ないでくれ。きみを諦めきれなくなる。

「…いい加減、分別つけようよナミさん」

「どうして」

「だって、俺たち仲間だろう?」

「仲間である前に、私は女で、あんたは男」

「……。」

「恋ができるの」

そうだね、ナミさん。
それもきみの言う通り。でもさ。
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