N o v e l -long-

□First Love -守る言い分-
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ボロなんか出さねえよ。…ナミさんの前ではな。









『……諦める……』



ナミさんに、振られた。
理由は簡単だ。ナミさんがロビンちゃんの香りに気づいた。

――なんて白々しいが、俺が気づかせるようにわざとやった事だ。そうして振らせるように仕向けたのも俺。
後悔なんてしちゃいねえが、もうあの一言を言われてから随分経つというのに、頭からその言葉はこびりついて離れてくれない。
「好き」という言葉よりも、こっちの言葉の方が残るんだ。
その「好き」が、もう無くなるのだと。思い続ける気持ちは捨てますという、宣言。

「ナミさん…」

自然と愛しい彼女の名前が滑り落ちる。
もう俺が、彼女の名前を彼女の耳許で囁く事もないのだと。
腕に抱くこともない。俺だけに見せる特別な笑顔を見ることもない。

でも、これでいい。
俺はナミさんを好きだと伝える事はできなかったし、振る事なんてもっての他だ。
俺がこうしたくてそうした。
そして、ナミさんとの確固たる絆を得るためにやったんだ。

…これで、いい。

ナミさんに酷く当たるのはつれえんだよ。
だからやっと、また以前のように本当の気持ちで接することができるんだ。
愛しい彼女の名前を愛しく心をこめて叫び、

『ナミっすわーん!』

愛しい貴女に呼ばれたら、まるでハリケーンのように登場しましょう。

『はいはい、お呼びですか〜っ!』

貴女の大事な蜜柑畑は、俺がきちんとお守りします。

『ナミさん!恋の警備万全です!』

…でも、どうしてかな。
前のように接する事ができない。
沈んだ気分で陽気に装うなんてのは、いくら頑張ったって目が笑ってねえんだ。

それを隠すように前よりもオーバーになってやしねーか?
前の俺はこんなだったかな。
どんなだったかな。

…本当の俺は、どこに行ったのかな。

ああ、そんな目で俺を見ないで。
きみが思っている仮面をつけた甘い俺は、本当の俺なんだよ。
ナミさんだけに見せる、本当の俺。

…最近は――これが俺だったか、思い出せなくなってしまったけど…。
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