N o v e l -long-

□First Love -女の存在-
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俺は昔から、何かイラつく事があるとウサ晴らしのように女とセックスをした。
周りのコックに皿洗いでもしてろと包丁を握らせてもらえない時。
周りのどんな大人よりも、もう俺の料理の腕は上な筈なのに、まだ客に料理を出させて貰えない時。
子ども子どもだと、散々ちびナスなどと罵られた時の悔しさを抱えた時。

煙草を始めた理由も、スーツを着た理由も、大人と認めてもらいたかったから。
それと――同じだ、セックスなんて。
女を口説き、思うように手に落ちれば、ほら、俺だって大人の男なんだって。
浸れる優越感。満足感。女遊びをする事がひとつのステータス。
そんな考え自体がガキ染みてるなんてこたあ、とっくに気づいてる。
ただ、物心ついた頃からそうしてきた事ってのは、なかなか自分の習慣から消えてくれやしない。

自分への慰め方や、苛立ちの押さえ方、動揺した時に頼る場所。
…全て、"女"と"セックス"。

「…ロビンちゃん」

彼女以外に、女はロビンちゃんしか居なかった。

「ナミさんの事…忘れさせてくれ」

そして俺の想いを、見透かした女。

「利用――させてほしい」

今までの女にしてきたような、ウサ晴らしのセックス。
――それとは少し、質が違っていた。
そんなただの子ども染みた考えで、大事な仲間のロビンちゃんに手を出したのか。
違う。何も話さなくても、全てを知っているかのような彼女に、頼ってしまったんだ。
ただのウサ晴らしのセックスなら上陸した時に他の女を捕まえている。

本気でナミさんの事を忘れさせてくれるんじゃねえかと思った。
彼女も大事な、俺の仲間だから。軽い気持ちでの行為じゃない。
他の女じゃ忘れさせてくれっこない。ナミさんに敵う筈がねえ。
それに彼女は、ちゃんと割り切ってくれる。
身体を何度重ねても、大切な仲間として接してくれる。

どんな理由をつけたって、結局は最低な事だなんて俺が一番分かってる。
それでも嫌な顔ひとつせず受け入れてくれたロビンちゃんには、とても感謝した。

それしか、知らねえんだ。
どうやったらあんなに魅力ある女性を忘れられる。
今まで何かを忘れたきゃ女を抱いてきた。
だがただの女じゃ駄目だ。同じように、魅力ある彼女を。
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