N o v e l -long-
□First Love -幸せな時間-
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蜜柑畑での出来事があってから、何かが変わったと思えた。
相変わらず彼の態度は前と変わらず、二人ともあの日の出来事を口に出すことはなかったけど。
あの穏やかな時間が、温かな腕が…夢だったんじゃないかと思わせるくらい。
それでもあの夜の出来事は、私にとって心に深く深く――刻まれていて。
同じ冷たい態度で接せられても、本当は、心の奥底では、私を大事に思ってくれてるんじゃないだろうかって。
期待が…膨らんでいくの。
だって、あの温かな腕は決して嘘じゃないもの。
思いが伝わってくるようだった。…きっと、嘘じゃない。
まだ、好きだとは思ってくれていないにしても。
仲間以上の関係には――なれたんじゃないだろうか。
一人で居るとどうしてもそんな事ばかりを考えてしまう。
サンジ君の事ばかり…そう、こうして街を歩いていても彼に似ている人を視線で追ってしまい…って…
「サンジ君!?」
思わず声に出てしまった。
無意識に私が視線で追っていた、二人の女に言い寄られているように見える金髪スーツの男は、サンジ君本人だったのだ。
自分の名を呼ぶ声が聞こえたのか、視線がバチリと合った。
すぐに逸らされ目の前の女性二人に戻される。
――こういう態度を取られるたび、やっぱり大事になんかされてないって思い直す。
何よ…。無視する事ないじゃない。
「…さん。」
「ナミさん!」
「え?」
驚いた。ぼうっとしてたらいつの間にか目の前にサンジ君。
「な、何。どうしたのよ?さっきのやけに色っぽい女二人組みは?」
ああ、嫌な女。そんな嫌味な言い方しなくてもいいじゃないって、自分でも思う。
本当は、こっちに来てくれて嬉しいのに。
「ナミさんが来てくれたから助かった。あの二人しつこかったんだよね。」
…女から逃げるための口実か、私は。
「誘われたら…誰とでも寝るんじゃないの、あんた。」
ムカついたから、更に嫌味を言ってやる。
…すぐに返事が返って来ない。
な、何よ。こんなんで傷つくたまじゃないでしょう?あんた。
「………ナミさんのエッチ」
「は!?」
すぐに返事が返って来ないと思ったら、いきなりそんな事を言う。
声だって思わず裏返るわよ。
「確かに俺は逆ナンされてたけど、すぐにそっちの思考に行くのはどうなの。
他にもあるだろ、お食事するとかー、買い物するとかー、」
ちょっと…これじゃまるで私が欲求不満みたいじゃない…!
「ううう、うるさいわね!あんたにエロってイメージしかないからこうなるんでしょ!」
「ははっ」
真っ赤になって怒る私を見て、目の前の男はなんとも楽しそうに笑う。
恥ずかしい――けど、こんな風に普通に話すのは、なかなかないから。
私も、凄く楽しい。
「誰とでも寝るわけじゃないよ」
――ドクン。
胸の高鳴る音。
それは――期待しても、
「あの二人、どっちも胸が小さかったんだ」
「………。」
最悪。