N o v e l -long-

□First Love -Prologue-
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〜プロロ〜グ〜




心地よく耳に響く食器の音。
微かに聞こえる波の音。

紅茶をすすりながら日誌を綴り、時折サンジ君の背中を見つめて。

私は寝る前のそんな一時が好きだった。

洗い物を終えた彼はこちらを振り向き、私と目が合うとにっこり微笑む。
いつものだらしなく笑う顔よりこっちの方が断然好き。

「ナミさん紅茶お代わりは?」

見ると中身は飲み干す寸前。
こういう気づかいができるとこも好き。
うちの船じゃ珍しいわ。

「ん、ありがと。平気」

笑みを返して遠慮して。
今日はもう戻るつもりだもの。


――どれだけ長い事航海しているんだろう。


部屋に戻ろうと閉じかけた日誌に目を落としてそんな事をふと思う。

どれだけサンジ君に片想いするつもりかしら?

今の仲間止まりの状態に飽きたのか、焦れたのか。
サンジ君の気持ちが聞きたくて。
日誌を閉じてから、真っ直ぐに見据える。

「?…やっぱりお代わり?」

とぼけた答えを返してくる彼が可愛くて、思わず笑ってしまいそうになるけれど。
勝負どころはきちんと気を引き締めて。

「サンジ君。………好き。」

突然なのだからしょうがない。
それとも私みたいなキャラが言うのは似合わない?

言った瞬間、彼は目を見開いて。
同時に私の顔も赤く染まっていく。

飾りっ気がなさすぎた?
ううん、素直な私の気持ちを言葉にしただけ。
こういう時って、それ以外何もいらないと思うわ。

妙に間が長く感じる。
その間に今みたいな言い訳がたくさん出てきたりして。

もう、どうして黙ってんのよ。

「あ…びっくりしたぁ。ナミさん、俺をからかうのはやめてくれよ。本気にしちまうよ?」

…馬鹿ね、なんでそんなこと言うのよ。
冗談として流されるなんて振られるよりよっぽど傷つくじゃない?
へらへらしながらそんな事言って、ばっかみたい。

なんて言い返す事もできずに、私はただ真っ赤になって見据えるだけ。

慣れない事するからよ。私の馬鹿。




暫く続いた沈黙ののち、すっと笑みの消えたサンジ君の表情を見て、覚悟した。
あ、返事が返ってくるんだなって。
やっと理解した顔。

緊張と期待と不安で、握った手のひらが湿ってくる。
高鳴る心臓の音が嫌でも耳に伝わってきて、それでも普段の彼を見てると期待ばかりが大きくて。
視線を逸らせずにじっと見る。

その、彼から発せられた言葉は…


「…ヤらしてくれんの?」


…信じられない、言葉だった。












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