N o v e l -short-

□レディーファースト
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昔から、魔女って呼ばれてたし。
自分でもそう思う。簡単に人は騙すし、泥棒猫だし、お金大好き。
けどそんなところも含めてあたしの魅力。
ただのキュート美人じゃつまらないでしょ?
綺麗な花には棘があるってね。

…ま、だからそんなヤワじゃないのよ。
女扱いなんて真っ平ごめん。
あたし相手には男に接する態度で丁度いいくらいだわ。







『レディーファースト』







「ねぇ、サンジ君」

「は〜〜いっナミすわん!何ですか〜っ」

「うざい」

「えええっ」

そう、この態度は真っ平ごめん。
まあ扱いやすいし、便利だし?
放っておいても特に害があるかといえばそうでもない。
だから今までは、この男はこういうものなのだと、言い聞かせて過ごしてきた。

でも…時々、たまに、いや、結構。
鬱陶しい…なんて思っちゃうのよね。

「前から思ってたんだけど、なんであんた女相手だと口調まで変わるのよ」

「それはもちろん、野郎なんかと同じ態度じゃレディにしつれ」

「二重人格?」

「き、聞いてナミさん」

「それにいつも甘ったるい言葉ばっか吐いて、何するにもレディーファーストとか言っちゃうし」

「それは俺が紳士だからしょうがな…」

「はっきり言って勘に障るのよね」

「え、えええ…」

「あたし、そんなお姫さまみたいな扱いされたくないの」

「俺は、」

「自分のことは自分で守るし…」

「ナミさん…」

「性別は変えようがないからしょうがないにしても、そんなあからさまに女扱いされたくない」

「だから、ちょっとあんたのその口調やめてよ」

「そ、そんなぁ。無理言わないでよナミさん」

「ほら、その情けない感じ。やめて。」

「ナミさ〜ん…」

「さんづけしない」

「そ、それは勘弁して」

「男にさんづけしないでしょ?」

「ナミさん女じゃん」

「だから、ちょっとでいいからその女扱いやめてよ」

「……」

「サンジ君あたしの言うこと聞けないの?」

「うう」

「じゃ、決まりね」

「あー」

「あたしがいいって言うまで」

「…分かった」

「よし、いい子。じゃ今から!サンジ君紅茶よろしく♪」

「………自分でやったら?」

「え?」

「いや、だから、紅茶くらい自分で淹れたら」

「……何それ」

「女扱いやめろって言うから…」

「うわ、最悪」

「え、えーっ、そんなナミさ〜ん」

「ほら戻ってる!」

「あ、う、」

「分かったわよ。紅茶くらい、自分で淹れるわ。何あんた、いつもそう思ってたわけね」

「ち、ちが…」

「戻ってる」

「うう」


私は少し、気分が良かった。
無理矢理だけど、サンジ君から女扱いされない状況を作る事に成功したのだ。
今日一日、鬱陶しさから開放されるなんて爽快だわ!






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