N o v e l -short-
□繋がり*
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繋がり
始まりは、サンジ君との些細な喧嘩。
「ねえ」
「ん?」
「サンジ君の今までの恋人って、どんな人だったの?」
「…急にどうしたの」
「知りたいなって思っただけよ。」
「心配しなくても、ナミさんが一番魅力的だよ!」
「そんな事は知ってんのよ!」
「自信満々なナミさんも素敵だ〜!」
「ってそうじゃなくて!」
「ナミさん、ジェラシ〜?」
「もう!真面目に答えなさいよ!」
「俺の恋人は、知的で、聡明で、キュートで、美人で、俺の恋の天気をいつでもハリケーンにしちまうクソ素敵なナミさんさッ!!」
「…馬鹿にしてんの?」
「してねえってv」
「今までの、って言ったの私」
「うん、だから、俺の恋人はナミさんが最初で最後!」
「…じゃあ、今まで他の女にはどう接してたの」
「どうって、普通?」
「やっぱりこんな風に鬱陶しいの」
「き、きついな」
「どうなの」
「…普通?」
「普通ってどんなよ」
「普通は、普通」
「…もういい」
「ほんとだよ〜?」
へらへらと、締まりのない顔で私と真剣に接してくれない。
ロビンと接しているのを見てて、やけに手慣れてそうだな、なんて思ってしまったのがいけなかった。
そこからサンジ君の過去の女関係が気になって気になって、しょうがなくなってしまったのだ。
会話を終えて、一方的に怒ってはキッチンから出ていった。
…そんな苛つきMAXな私に、また苛つきの原因。
…何、あの沢山の船。
・・・・
・・・
・・
「サンジ君ッ!!ねえ、大丈夫なの?ごめん、あたしがボーっとしてたから…!」
麦わらの一味はただ今敵襲にあっていた。ほとんどが片付き、いつものように軽く、皆が皆無事に。
…敵を、追い返す予定だった。
それが、そうはいかなくなった。
ナミはサンジと喧嘩をして集中力が散漫になっていたせいか、戦闘中に油断したのだ。
男には意識がない。駆け寄る女。
必死に安否を確認するように声を張り上げる。
そんな女に呼びかけられて、霞む思考の中覚醒した男は視線を上げた。
「…誰だよ?」
「…え、」
「ナミーー!!どうした!!」
一瞬、耳を疑ったが確かに目の前の男はそう言った。
驚き何も返事ができぬままに、この船の船長が騒ぎに気づいてやってきたようだ。
「ルフィ、サンジ君が、…サンジ君の…っ」
「何だ?どうしたナミ。ってサンジ!頭血だらけじゃねーか!」
そこで男は初めて頭痛の理由が分かる。たった今、戦闘でこの女を庇ったのだと。
頭に手を添えるとべったりと手に付着する赤色。
「ああ…。ああ、悪いな。心配かけたろ、俺はこの通り大丈夫。」
「え?」
「元気そーじゃねーか。サンジだもんな、当たり前か」
「おー、平気平気、ピンピンだぜ」
この何気ないいつもの会話にも、ナミは一瞬感じた違和感を拭い去る事ができない。
さっきの、まるで知らない人物を見るかのような冷たい目の色は何なのかと。
「…一応、チョッパーに診てもらいなさいよ。」
「はーい」
何事もなかったかのように立ち上がり、男は頭を押さえながら軽い返事と共にふらふらと仲間の集まる元へ。
「…聞き、間違い…?」
ざわつく心は、治まることがなかった。