N o v e l -short-

□真っ直ぐに君を見つめて
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――キラキラ、眩しい。

みんな真っ直ぐだ。
夢に向かって真っ直ぐだ。
疑いもせず、信念と誇りを掲げて突き進んで行く。


…俺を除いて。







「真っ直ぐに君を見つめて」







夢見が悪ィ。
唸され目が覚めるとその後は寝苦しくて眠れやしない。
こんな夜は、朝まで寝付けない。

風に当たると少しは気分が楽になる。
甲板へ出て煙草を銜えてぼんやり過ごす。
決まって考えるのは夢のことだ。

…夢。夢?
オールブルー?
違う。
昨夜の夢の話だ。
いや、どっちもか。


それと、もうひとつ。
彼女を守りたいという夢。


「…夢、ねェ…。」

声に出してみて、愕然とする。
守りたい彼女。
果たして俺は守れてるか?
俺がいる前まではどうやって過ごしてきたんだろう?
アイツらが守ってた?

…そりゃ守るだろうな。アイツらなら。


…眩しいんだ。
アイツらの中にいると、とても、眩しい。
真っ直ぐすぎて。
揺らぐことのない信念持ってて、ひたすら常に真っ直ぐだ。

そんな野郎たちに囲まれて過ごしてきたナミさん。

アイツらと一緒にいると、凄く楽しそうに笑うよね。


――俺は?


「俺はどうだ…」


――簡単だろ、野望捨てるくらい!


うるせェな…過去の記憶見せんな。


――死ぬことは恩返しじゃねえぞ!


テメェに言われなくても。


…アイツらと俺は違う。
そりゃァ俺にだってオールブルーの夢を信じる気持ちはある。

…でもどうだ?
アイツらみてェに夢のために死ねるか?
何事にも後悔せずに進めるか?
馬鹿言え、後悔なんざ腐るほどする。
夢だって…、俺は仲間を失うくらいなら諦めるかもしれない。
否、――諦めるだろう。

今のことを考えると、ついつい自分の夢を忘れがちだ。

…俺だけだろうな。
みんなは持ってる、心に夢を。
そう、真っ直ぐで――強い瞳で先を指してる。

俺にはあるのか?その瞳。
周りにこんなヤツらばかりだ。
ナミさん、君は俺とアイツらを比べてやしない?

弱くて迷ってばかりな俺は、君どころかヤツらにも手が届きゃしないよ。


「守りてェのになァ…。」

「何を?」

「!?」

「何を守りたいの、サンジ君」

ずっと夢のことばかり考えてたから、これも夢なんじゃないかと疑った。

「さっきから頭抱えちゃって」

自分の世界に没頭しすぎていて気づなかったのか。
とんだ失態だ。
慌てて煙草を揉み消して気持ちを切り替える。
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