N o v e l -long-

□ First Love -仮面の理由-
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人を愛する思いとか、愛されたりとか、恩だとか。
それらを感じずに育ってきたわけじゃない。
クソジジイには何度だって救われた。
あのジジイなりの愛情なんてもんも、感じ取ってはいた。
パティやカルネ。何かといやァ俺に難癖ばかりつけてくるクソコック共だったが、
どこか憎めねえ…そんなやつらばかりが、あのレストランには集まっていた。
去り際に流した大量の涙。大の大人が、揃いも揃って号泣というのに相応しいほどに泣き散らして別れを惜しむ。
ああ、いいもんだ、友情ってもんは。…愛情って、もんは。

だがそれは、男に限りの事。
野郎同士には、何かこう、言い表せねえ…熱い何かが、存在する。…と、俺は思っている。
女はな、怖ぇんだ。野郎ほど信用はできない。


ずっとそんな思いを抱えて過ごしてきた。船に乗ってからも変わらず――の、はずだった。
一生女を愛さずに生きていくんだろうと思っていた俺の人生は、ナミさんに出会ってからガラリと変わった。
海賊というものは男ばかりのイメージで、俺にとっては好都合。
信じられない女が居るより、自分の夢を追うための船には男だけの方がいい。

――彼女が仲間である事は、知ってはいた。

初めは、彼女が裏切ったと知って、やっぱりなと思った。
ほらな、女は信用ならねえ。男は簡単に騙される。
その事で一味を抜けた事は、ラッキーだと思った。
それでもあの我侭な船長が、あいつじゃなきゃ嫌だと言うから。

その意味が、彼女に再び出会って。
ハッキリと――分かった。

あの不気味なナリした魚人のアーロン一味の中で、自分に強く生きようという彼女の姿勢に度肝を抜かれた。
村のためにしていた事なのだと知った時、なんて心優しい女性なのだと。
そんな女は見たことない。女は弱くて、脆くて、上辺だけで。なんでも男に頼ろうとして。
そういう生きものじゃ、なかったのか。

一味に戻ってきても、男だらけのこの空間で、そんな中足元を強くしっかり立つ彼女に惚れた。
世の中には、こんな女もいるのだと。
今まで見てきた世界の、なんと狭いこと。

ナミさんのような女性に出会えて、俺の女を見る目が少し変わった。
世の中には、俺が思ってきたような女だけじゃないということを知らされた。
ナミさんのおかげで、ロビンちゃんを信じる事が出来たんだ。

ナミさんが一度したように、ロビンちゃんも俺たちを裏切った。
けれどもそこには、何かナミさんのようなよっぽどの理由があるんじゃないか?

「女の嘘は――許すのが、男だ」

ああ、きっと嘘だ。偽りに違いない。
ナミさんが大好きな女性だ、ルフィが選んだ女性だ。そんな彼女が、俺たちを裏切るはずがない。
ナミさんもロビンちゃんも、俺が出会ってきたいかなる女とも違ェんだ。
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