―BL―

□…困った子だ…
2ページ/4ページ










陽当たりの良い部屋の隅で枢は読書をしていた。
だが全く持って集中出来ない。

それもこれも全ては"あの子”のせい。




「―――…」



枢はため息の変わりに小さく音をたてて本を閉じた。




「…零…?」

「………」


枢の見つめる先にはべたーっと床に寝転がっている零にゃんの姿が。

しっぽをぱたりと動かすだけで、他は何の反応もない。



「…そこは僕には眩し過ぎるんだ…だから…こっちへ来てくれないかい?」

「……ならずっとそこにいろ。俺が行く意味が分からない」



素っ気ない。本当に。

素っ気なさ過ぎて、向けられた背中を見つめるのが寂しい。

陽の光の元、気持ち良さそうに眠る君と、それを好まない僕。


この距離がたまらなく寂しいと感じる―――…









「おい」


沈んだ気持ちを引きずるように顔を上げると、いつの間にか零が目の前に立っていた。


「…変な顔してんじゃねーよ」

「…変な顔…?」

零は真顔のまま座っている枢に目線を合わせ、すっと手を伸ばすと手の甲で軽く枢の頬を叩いた。



「…いつもと違うだろ」
その言葉に、枢は零の手にすり寄る様にして小首をかしげた。


「…違うって…どうして?」

「顔に出てる」

その言葉に短く間をおいたあと、小さく呟いた。
「…………そう…」


枢は瞼を伏せたまま下方を見つめていた



悲しみや寂しさを他人に打ち明けることをしない枢は、いつもどこか寂しげだった。
けれど、彼のその気持ちを察することが出来ないわけではない。
許された者だけが知る、小さな隙…心の許し…



自分がしたことに対して見せるその表情は案外いいものだった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ