□銭湯
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しばらくすると先に浸かっていた零は顔が熱く逆上せ(のぼせ)そうになるのを感じていた。
それを察したのか枢は涼しい顔をしてこんなことを言う。
「錐生くん…そろそろ限界?」
枢の言う『限界』という言葉に零に反抗心が芽生えた。
「…別に。玖蘭先輩こそあがったらどうですか」
「心配しなくても僕は大丈夫だよ…」
「別に心配なんてしてませんけど」
「そう…僕はただ君が顔を赤くしているから逆上せそうなのかと思って言っただけだよ」
「そうですかわざわざどうも。ご心配なく、あなたに言われるほど逆上せてないんで」
「…僕が言うほどと言うことは少しは逆上せているのかな」
「…一々細かいですね。もうほっといて下さいませんか」
淡々とした会話が次々に交わされる。
会話と言っても決して穏やかなものではなく一言一言に計り知れない何かが含まれているのだが…。
「…………もしかして…」
零にほっといてと言われても枢は会話を続ける。
果たしてそれは何故か。
今までの経験上ある程度は予想出来ているのだが。
……嫌味を言われる。
それは優姫でさえ心配するくらいだ。
そんな優姫に対して『大丈夫イジワルしないから』とニッコリ笑った枢は今思い出しても寒気がする…
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