□銭湯
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手早く髪や体を洗い湯船へと浸かる。
「…………」
ゆっくりと肩まで浸かると零は誰もいない広々としたスペースをくつろいでいた。
目を閉じてゆっくりと深呼吸をしながらぼー……としていると
カポーン…と浴場内に響く桶の音がした。
誰か入ってきたのか……
特に気に止めることでもないのでそのまま目をつむっているとしばらくして湯の温かさにだんだんと眠くなってきていた。
「…やばい…寝る…」
そろそろ上がろうかと思い体を起こしかけた時だった
「そんなところで眠るつもりかい?」
一瞬にして目を見開く。
「なっ…!」
なんとそこには隣に座って湯に浸かる枢がいるではないか。
「…なんであんたがこんな所にいるんだ」
あまりにも予想外の展開に零は怪しいものを見るような目で枢を見た。
その様子を枢は目線だけで確認すると瞼を伏せる。
「僕も最近よく来るんだ。今日はたまたまこの日が空いていただけでいつもは違う曜日だよ」
「…………そうですか」
理由を聞いたところで「そうですか」以外に返す言葉も見つからず零は黙って再び湯に浸かっていた。
近くもなく遠くもない距離に同じ方向を向いて銭湯の湯に浸かる二人……
もちろんどちらかが進んで話題を振るわけでもなく「…………」というのが見えているかの様に会話はゼロ。
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