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□クリスマスの憂欝
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「うわー、雪降ってんじゃん!」


見ろよと騒いでいる切原に対して俺の反応は冷めきっていたと思う。

財前は外を携帯で撮って何やら弄っていた。
そのことが不満だったらしく文句を言っているが寧ろ俺の方が言いたい。

何が悲しくて男三人でクリスマス過ごしてんだよ!


クリスマスの憂欝


事の始まりは昨日の合同合宿の時。
三校合同ということで氷帝学園には立海と四天宝寺が来ていた。

学校を案内するということで切原と財前と部室に向かっていたら、急に切原が大声を出して足を止めた。


「あッ!」

「……何だよ」

「急に大声出すなや」


財前も驚いたらしく不機嫌そうに切原の方を見た。

それに対していつもなら間違いなく喧嘩勃発なのに、それどころじゃなかったらしく切原は焦った感じだった。


「明日、クリスマスイブだろ!」

「はぁ?」

「そういやそうだったな」

「何でそんな普通の反応なの!?もっと盛り上がる行事じゃん!」


どうしようとはしゃぐ切原に対してどうでもいいと感じる。
何でそんなに騒ぐんだ。


「というよりお前、まさかとは思うが……サンタとか信じてないだろうな」

「コイツなら有り得そうやけどな」

「流石に信じてないから!」


別に馬鹿にしているつもりではないが、これだけ浮き足立っていると少し心配になってしまう。

まぁ、それは無かったみたいだが。


「で、何考えてんねん」

「そうそう、クリスマスパーティーしようぜ!」

「……は?」


再び怪訝な顔をしてしまう。
財前に至っては自分から質問をしておきながら、どうでも良くなったらしく携帯を弄りはじめた。


「ほら、どうせ明日は一日オフにしてくれたじゃん」

「そうだけどお前ら先輩たちと遊ぶんだろ?」

『それはどうでもいい』


二人とも息を揃えてきっぱりと否定する。

確かに明日は休みだが一体どこでやるつもりだよ。
それにどうせ跡部さんが俺様の家でやるぞとか何とか言いながらやるんだろうし。


「因みに場所は日吉くんの部屋でね」

「え!?」

「なんや、そういうことなら俺も協力したる」

「よっしゃ!」


もう既に俺の家でやること前提で話が進んでいく。

財前も乗り気になったらしく何時集合だの話合ってる。

これでいいはずがない。


「待て、俺は一言も良いって言ってない」

「あ、それなら日吉くんのお母様に了承貰ったから大丈夫」

「母さんッ!!」


あなたは何時この馬鹿と連絡を取り合っていたんですか!

一気に絶望感が増した。

こうして半ば無理矢理とも言えるクリスマスパーティーが始まった。


**************



「もういい加減機嫌なおせよ」

「煩い、ほっとけ」

「拗ねとるな」


炬燵に潜っていじけながら蜜柑を食べる。
もはやクリスマスなんて関係ない。

大体、俺は最初からはしゃぐつもりなんて無かったのだから当たり前だ。

そんなことを考えていると両脇が急が少し寒くなった。


「炬燵って温かくていいね」

「冬は必須やろ」


二人はわざわざ狭いところに入ってきたらしくぎゅうぎゅう詰めになっている。


「何でこっちに入るんだよ」

「だって折角のクリスマスなんだし」

「せやな」

「それに俺、日吉くんと一緒に居たかっただけだから」


クリスマスなんて口実っと悪戯っぽく笑う切原に抱きつかれ思わず胸が高鳴る。
そんな風に思ってるなんて知らなかった。


「日吉は気づいとらんやろうけど、俺らはこうしてるだけでええんやで」


財前も俺に手を回してきて、俺は二人に抱きしめられた。

密着してても嫌な感じではなかった。
寧ろこのままでいて欲しかった。


「……俺も…これでいい」


思わず笑みが零れてしまい、三人で笑った。

外は寒いけど、俺たちは少し暑いくらいで丁度良かった。






















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