倉庫

□手つなぎ
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部活も終わり外もすっかり暗くなっている。
そんな中、俺は跡部さんと二人で帰っていた。

いつもと変わらない帰り道がすごく早く感じてもどかしい。
それは跡部さんも一緒のようで、自然と歩調がゆっくりになってきた。


「今日は寒いですね」

「そうだな」


当たり障りのない会話さえも嬉しく思える。
思い返してみると今日はやたらと先輩たちが構ってきたので二人きりで話す時間は無かった。

それが不満だったのか良く分からないが、部活後すぐに手を引かれ今に至る訳だが。

勿論嫌な訳じゃなく、寧ろ嬉しかった。
俺も跡部さんと一緒にいたいと思っているから。


「日吉、ちょっとそこの公園寄っていいか?」

「?いいですよ」

「ありがとうな」


公園に入って、近くのベンチに座らされた。
跡部さんはなぜかベンチには座らずに、俺の目の前に立っていた。


「座らないんですか?」

「いいんだ…なぁ、目を瞑ってくれないか?」

「はぁ…いいですよ」


いつもの不敵な笑いとは違い穏やかな笑顔。
それに何も言えなくなり大人しくしたがった。

目を瞑るとふわりと跡部さんの香りがしてきたのと同時に首にひやりと何かが触れた。


「開けていいぞ」

「…コレって」


首に掛けられていたのは小さな石が埋め込まれたプレートのネックレス。
石は跡部さんの目の色と同じで街灯の光で輝いている。

裏にはイニシャルが入っているらしくK.Aと彫られていた。


「誕生日おめでとう、若」

笑顔で祝ってくれるこの人に不覚にも涙が出そうになった。

幸せすぎる。


「ありがとうございます、跡部さん」

「俺も同じの着けてるからな」


そう言いながら胸元から俺が着けているのと同じものを見せてくれた。

この人はどうしていつも俺をこんなに喜ばせるのが上手いんだろう。

だからこの人には敵わない。

手を握られて跡部さんの温もりが伝わってくる。


「これからもこの手を離したくない。ただお前と二人で笑っていたい」

「…っ」

「生まれてくれてありがとう。好きだ、若」

「お、れも…好きです。大好きです」


零れてくる涙を止めないで好きだと跡部さんに伝える。
跡部さんもそれに答えるように、抱きしめてくれた。
これ以上何もいらない。


だから一緒に手を繋いでいたい。


繋いだ手からこの思いが伝わるように、固く握りしめた。





Happy Birthday!










H22.12.5 琉蓮
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