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□熱恋歌
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「日吉暑い・・・」

「・・・」

「暑い・・・」


隣で暑いと言い続けてるのは氷帝に練習試合という名目で来たはずの財前。
どういう訳か俺の部屋で唸りながらべたべたとくっ付いてくる。

はっきり言うがウザい。

普段のコイツからじゃ考えられないぐらい緩みきっている。
四天宝寺の先輩方に見せてやりたい。


「ひよし・・・」

「離れろ」

「ええやろ。減るもんやあらへんし」

「邪魔くさい」

「それより暑いんやけど」

「だから離れればすむ話だろ」


うーとかあーとか訳の分からないことを言い続けている。
本当に今日はどうしたんだ、コイツ。

いつもなら俺の横で雑誌なり携帯なりいじっているのに今日はそれが無い。

ただ後ろから抱き抱えるように俺に張り付いているだけ。

不自然なことばかりの財前に流石に心配になる。


「日吉は暑くならへんの?」

「暑くはない」

「ほんまに?」

「あぁってうわッ!」


急に服の中に侵入してきた財前の手に大げさなくらい反応してしまう。

ぺたぺたと触る財前の手は思ったより冷たかった。


「色気無い声やな」

「いきなり何するこの変態!」

「いや、日吉は冷たいんかな思うたんやけど意外と暖かいんやな」

「当たり前だろ。俺は平温だ」

「んー折角やからもっと熱くなることせえへん?」

「な、に言って・・・お前どうしたんだ」


後ろを振り返ると不機嫌とも取れる表情をした財前がいた。
何かをもがいてる感じがする。

思わず財前を抱きしめる。
こうでもしないと泣き崩れてしまうんじゃないかと思った。

財前も俺の背中に手をまわしてポツリポツリと話し出した。


「日吉は俺のこと呆れたりしいひん?」

「あぁ」

「今日な、先輩たちに言われたんや」

「・・・」

「そんなに意地張ってると日吉くんも嫌になってまうんやないのって」


さっきよりもきつく抱きしめてくる財前に俺まで切なくなる。

そんなこと有るはず無いのに悩んでくれることが嬉しい。

喜んだら怒られるかもしれないけど、財前が俺のことを考えてくれてるということが最大の愛情表現のような気がする。


「ほんまの事言うと前から日吉も俺のこういう所嫌なんかって思ってたんや」

「だから今日はやけにべたべたしてたのか」

「せや」

「馬鹿だな」

「へ?」


阿呆面した財前が面白くて思わず笑ってしまった。
それがからかったと思ったのか先程の様に不機嫌な顔で俺のことを睨んできた。

いつもなら考えられないような子供っぽい表情に更に笑いが込み上げてきた。
こんな顔、俺しか見れないだろう。


「俺は意地っ張りで人のこと馬鹿にしてきて不器用な財前がいい」

「・・・」

「そんな財前だからいいんだろ」

「ひ、よし・・・」

「お似合いだろ。素直になれなくて意地っ張りな俺たち」

「せやな」


お互い笑いながら額をこつんとくっ付ける。

俺はどうやったらお前がどうやったら喜んでくれるかとかこっちを向いてくれるとか考えてる。

こんなこと言ったらお前は絶対調子に乗るから言ってやらないけど。

言いたいことはつまり俺もお前の事がその位好きだってことだ。

だから早く気付けよ。


















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