倉庫

□笑っていて
1ページ/2ページ


「明日は部活は休みだからしっかり休んどけよ!」


跡部の声がコートに響き渡る。
榊の解散と共に部員が各自散らばった。
唯一これから自主練をするらしい日吉と他のレギュラーが残っていた。


「日吉」

「何ですか?」

「お前明日暇だろ?俺様の家に来いよ」

「は?急に何ですか?」


日吉は嫌そうに眉間に皺を寄せて跡部を思いっきり睨む。
それを大して気にしていないのか日吉の目の前まで行き手を取って自分の方へ引き寄せる。


「ちょっと何するんですか」

「何って抱きしめてるだけだろ」

「離してください」

「せやで、離してやり」


今度は忍足が日吉を自分の方へ引き寄せそのまま胸の中に収める。
満足気に首筋に顔を埋めてそのまま耳元で喋りかけた。


「なぁひよは俺と映画見るんよな?」

「何のことですか?というか近いので離れてください」

「ええやろ、別に」


取りあえず離れたくて仕方がないのか忍足の中でもがく。
そこに何処から湧いたのか向日が日吉の前まで来て忍足の手を叩き落としてそのまま日吉にくっ付く。


「何すんねん、岳人」

「侑士こそ何してんだよ!」

「あんたも何してんですか」

「俺はいいんだよ!日吉に抱きつく権利がある」

「その抱き締めるじゃなくて抱きつくってとこが可哀想だよな」

「宍戸、煩い!!」


宍戸は岳人を小さいと馬鹿にしながら日吉の体に腕を回す。
同じ身長だが少しだけ宍戸の方が大きいのか丁度日吉の顔と向き合う形になっている。
少し動いたか唇が触れそうな距離に思わず日吉の顔が赤くなる。


「な、丁度いいだろ」

「宍戸さんまでふざけないでください!」

「別にふざけてねぇよ。明日あいつらじゃなくて俺ん家来いよ。兄貴も会いたいって言ってたぞ」

「洸さんが?」

「宍戸さんずるいです!」

「…長太郎」


気がつくといつの間にか鳳がいて日吉の手を握っていた。
誰もが大型犬と納得しそうな表情で体全身でこっちを見てオーラを出していた。

「俺も日吉と遊びたい!」

「何言ってんだお前」

「だって最近跡部部長とかばかり日吉構っててズルイんだよ。俺も日吉といちゃいちゃしたい!」

「イチャイチャってお前な…」

「日吉だっていいだろ?」

「別に俺は」

「あーあ、鳳それ可愛いとでも思ってるの〜?」


どす黒いオーラを纏いながら鳳を見上げる芥川は小さいのにすごく大きく感じた。
日吉もいつもと違う雰囲気をした芥川に驚いたのか体がびくっと跳ねる。
鳳をどかして日吉の頬に両手をもっていき挟んで自分以外見れないようにしている。


「ねぇひよ、そんなに俺のこと怖い?」

「いえ、そうじゃなくて…何か芥川さんいつもと違うって言うか」

「だってみんなに囲まれてひよが俺を見てくれないんだもの」

「え?だってアンタ寝てたじゃないですか」

「今日は起きてた!!」


拗ねて頬を膨らませている芥川に跡部の手が伸びて日吉から退かす。
それに続いてみんな一斉に俺が明日は日吉と一緒に過ごすだの勝手なことを言っている。
日吉は一人そんな状況に付いていけてなくて何故こんなことになっているのか考えた。


「というかそんなに遊びたいのならみんなで遊べばいいじゃないですか」

『え?』

「だってアンタ等の話聞いてるとそれが一番じゃないですか」


それ以外どうしろととでも言いたそうな顔をしてキョトンと首を傾げていた。
確かにみんなそうは思うがやはり2人きりで過ごしたいというのも本音である。


「それに俺は大勢でいるの嫌いじゃないですし…」


少し照れながら嬉しそうに言う日吉に誰も反対などしなかった。
その笑顔を見れるだけで十分な気がする。
そう思いながら明日の予定をみんなで立て始めた。


君が笑っていえばそれだけで俺達はどんなことでもできる気がする。




→Next あとがき


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ