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□伍千打記念
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きっかけは俺から持ち出した恋人のフリをしてくれという頼みから。
日吉は一瞬ためらったが契約という形で了承してくれた。

あれから三ヶ月。
もうすぐ契約が切れるけど心の中で変化してきた感情が抑えられなくなってきた。


キスは契約違反です

部活終わりの帰り道は少し前から日吉と帰るようになった。
恋人ならばそれ位するんじゃないんですかという日吉の言葉に納得して、それからは2人で帰っている。

普段の日吉からじゃ考えられないような優しい表情で他愛のない話をするから思わず本当に付き合ってるかのような錯覚になる。


「そういえばもうすぐ契約切れますね」

「そうやったっけ?」

「そうですよ。忘れないでくださいよ」


忘れてなかったけどとぼけることしか出来なかった。

頼んだ時は恋愛感情なんてなかった。
ただフリをしてもらうだけでその後ではさっぱり無かったことにする。
女なら別れた後も煩そうだが男なら大丈夫だろうと思った。

その予定だったのに一緒にいればいるほど胸がざわつく様な感覚になりどうしようもない程、日吉に依存していた。


「なぁ、日吉」

「何ですか?」

「もし契約切れたら・・・どうするん?」

「どうするも何も終わりでしょう」

「せ、せやな。何言ってんやろ、俺」

「本当ですよ。どうしたんですか」

さも当たり前だとでもいうかの様に笑う日吉に何だか腹が立つ。
けど俺が怒る権利などなくて、止める権利すらない。

ゲームなんかじゃないけど惚れた方が負けとでも言われている気がしてならない。
もしかしたらという甘い考えがあったのも事実。


「忍足さん」

「何や?」

「駄目ですよ」


見透かされている。
冷ややかとも何とも言えない声。
何を考えているか分からない目。

きっと日吉は自分が何を考えているのか分かっている。

熱いものが迫上がってくる。
その熱に当てられてなのか衝動的に日吉にキスした。
否、キスしようとした。

けどその行動すら読んでいたかのように手で口を塞がれた。


「だめです、忍足さん」

「キスは契約違反です」


口だけの笑顔に非情な言葉。
歪んでいる日吉に同じく歪んだ自分。
全ての引き金の自分を後悔する。

どちらも狂っている。
日吉も俺もこの不毛な関係も。
今出来ることは終止符を打つ瞬間が来ないようにするだけ。




















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