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□伍千打記念
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学校からの帰り道

息を吐くと白い煙が出て冬だなと思わせる。
隣にいる日吉は何を考えているか分からないけど同じように白い息を吐いている。


寒いのでいつもより距離が近い。
こんなに近いのは久しぶりじゃないかな。


キスして欲しかったのにね、



普段日吉は俺との距離を開けてそっけない様子で帰る。
最初の頃は近くがいいとか言ったことはあった。
でも日吉の嫌そうな、締め付けられそうな表情をみたらそんなことする必要ないと分かり今は一歩分くらいの間が空いてる。


けど冬だけ違う。
寒いのが嫌いなのかなるべく暖かくしたいらしくピッタリとくっついてくる。
猫みたいと思うけど言うと絶対怒られるので言わないけど。


「おい」


少し苛立ったような声で日吉が話しかけてきた。
横を向くと怪訝そうな顔でこっちを見ている。
黙っていたのが心配だったのか目が少し揺らいでいていつもの日吉じゃないように感じた。


「どうしたの?」

「それはこっちのセリフだ」


日吉が見ろと言わんばかりに睨みつけながらある方向は指さしていた。


「あっ・・・」


指さす方向には日吉の家がありいつの間にか着いてしまったことに気付いた。
いつもなら着く前に遠回りしようとか離れたくないと騒ぐのに今日は全く気がつかなかったので何も言っていない。

たぶん日吉はそれで少し心配になったんだろ。


「着いちゃったね」

「やっぱり気付いてなかったのか」

「うん」

「…何かあったのか?」


首を傾げて不安の色を滲ませている瞳をこちらに向けてくるのに対し嬉しさがこみあげてきた。

俺のことを心配してくれている

たったそれだけのことに舞い上がってしまうのは単純というのだろうけど、喜ばずにはいられない。
日吉のこういうところは本当に可愛いと思う。


「何でもないよ」

「本当か?」

「嘘じゃないよ。日吉のこと考えてただけだしね」

「なっ!バカだろ!!」

「バカって酷い。好きな人のことを考えるのは当たり前だろ」


五月蝿いとか言ってくるけど顔だけじゃなく耳まで真っ赤だと嫌味すら嬉しくなる。
むしろもっと言いたくなってしまう。

けして俺がSな訳じゃなくて日吉が苛めたくなる要素を持っているのが悪い。


「心配して損した」

「心配してくれたんだ」

「…違う!むしろいい気味だと思った」

「けど今、言ったじゃん」

「何も言ってない!」


恥ずかしかったのか涙目になりながら顔をそらす。

少し苛めすぎたかと反省して「日吉」と名前を呼ぶ。
反応はしたが顔をこちらに向けようとはせず地面と睨めっこを続けている。

じれったくなり頬に手をもっていき顔を上げさせた。


「日吉」

「・・・・・・」

「そんな顔してるとキスするよ」

「っ!?」

「いいの?」

「〜っアホ!」


ドンッと突き飛ばされて家の中に逃げられてしまった。
さっきまで隣にあった温もりが消えて寒さがます。

きっと明日は機嫌悪くて口を聞いてくれないんだろうな。
謝り倒すだろう自分の姿を想像して呑気に笑ってしまった。


















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