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□伍千打記念
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完璧

その言葉がこれほどまでに似合う人を俺は今まで見たことがない。
文字通り全てにおいて完璧なのだから、羨ましくなってしまうほど。

けどやはり誰しも欠点はある。
それは白石さんにおいても例外はない。
現にたった今、最大の欠点と言えるものが出てしまってる。



キス魔だから




「日吉くん、キスしてええ?」

「無理です」


かれこれもう10分以上この応答が繰り返されている。
久しぶりに会った白石さんは前よりも症状が悪化したように感じた。
俺が本を読んでいる横で執拗にキスしようとしてくる彼を適当にあしらう。
最初の頃こそは本当に困った。
まだ付き合う前だというのにキスしてきたり、人前でも平気ですることもあった。
勿論思いっきり殴った。
それでも飽きずにキスを迫ってくる。
それを相手にしていたらいつの間にか対応出来るようになっていた。


「日吉くん」

「何ですか?」

「やっぱり俺にキスされるの嫌なん?」

「別に…そう言う訳じゃないです」

「じゃあ、俺なんかやってもうた?」


流石に拒否されたのがショックだったのか暗い顔をして俯いていた。
ちょっとやり過ぎたかなと思い本を机の上に置いて白石さんと向き合う体勢にする。
それに少し嬉しかったのか持ち上げられて膝の上にそのままの格好で乗せられた。
この格好はかなり恥ずかしい…。
顔と顔の距離が近い。
けど今は白石さんと話をするために我慢した。


「白石さんがキス魔なのは知ってます。けど俺は…恥ずかしい…」

「俺は日吉くんが好きやから日吉くんと沢山キスしたいんや。これが謙也とかやったら絶対ありえへんし」

「そうなんですか?てっきり忍足さんの分身にもキスしてるのかと思ってました」

「そんなこと思っとったの!?ありえへん!本当にしてへんからな!!」

「分かってます。もし本当にしてたら白石さんのこと投げ飛ばすつもりでしたから」

「えッ…」


顔を青くして想像したら恐くなったのか自分の身を抱いていた。
その反応が面白くてもっとからかってやろうかと思ったけど今日はこの辺りにしておこう。
少し俺を不安にさせた仕返しだ。
甘いものだと思う。


「白石さん」

「…なんや」

「好きですよ」


彼の欲しがっている言葉を言った瞬間不意討ちのキス。
唇と唇を軽く合わせるものであまりに優しく触れてくるので愛が伝わってきてるように感じた。
離れるとまた唇を塞がれる。
先程とは比べ物にならないくらいの深いもの。
舌を絡めとられ口腔を舐め回される。


「……ん……ふッ…」


息苦しくなって白石さんの胸をドンドン叩くと唇が離れた。
情けなく肩で息をしていると白石さんがニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべていた。


「待たせた分たっぷりキスしたるから」


顎に手をかけられ不覚にも格好いいと思ってしまったとは絶対に言わない。














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