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□伍千打記念
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「…何してるんですか、仁王さん」
「プリ」
犯したキスの数だけ
先程から俺の髪を手櫛で解いたかと思えば、小さな三つ編みを沢山作っている。
お陰で頭は三つ編みだらけだ。
時々真剣な顔になるかと思えば急に力の抜けたような笑顔を見せたりする。
そんな一つ一つの仕草に見とれてしまい正直恥ずかしくて今すぐ後ろを向きたい。
けど動こうとすると不満気な表情をするので動けずにいた。
「そんなに三つ編み作ってどうするつもりですか?」
「こうやっとるとお揃いみたいでええ気分がするんじゃ」
「…素で恥ずかしいこと言わないでください//」
「本当のことだしのう」
飄々としながら不適に笑う姿は少しムカついたが格好良いと思ってしまった。
三つ編みを作る手を止めて髪を撫でられる。
その行為は嫌じゃなくて寧ろ好きだ。
仁王さんは猫みたいとよく言うがそれでもいいかも知れない。
「満足しましたか?」
「まだ何が足りんのう…そうじゃ」
「どうしました?」
「少し目を瞑っとれ」
何がやりたいのかよく分からないが言われた通り目を瞑る。
数秒開いて何かが口に触れた。
柔らかく、温かい感触に驚いて目を開ける。
するとリップ音をたてて唇からゆっくりと離れていった。
それが恥ずかしくて顔に熱が集まるのが分かる。
「な、名にするんですか!?」
「何ってキスに決まっとるぜよ」
「そうじゃなくて、急に何するんだってことだ!」
敬語すら忘れてしまう程急なことに困惑していた。
この人の気まぐれはいつものことだとは思っていたが、これは急すぎる。
正直、今でもよくを状況が分かっていない。
「別に急でもないじゃろ」
「何処がですか…」
「好きな奴を独占したいのは当然じゃけえ。全部俺のものじゃ」
言葉が出てこない。
折角冷めてきたと思った顔の熱がまた上がってきた。
きっと今の自分の顔は間抜けなものだろう。
「…不意討ちは狡いです」
「日吉の照れた顔も好きだしのう」
本当にこの人には敵わない。
けどそんな所さえも愛しく感じてしまう。
自分も相当彼のことが好きなのだろう。
仁王さんをちらっと見ると嬉しそうに笑っていたので俺も笑ってしまった。
俺の中にキスの数だけ足跡を残して…。
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