神崎が、最近冷たい。
冷たいっつーか冷めてるっつーか。
話し掛けても「ん…」とか「おう」しか言わねぇし。
チャリチャリと揺れる唇と耳を繋ぐチェーン。遠くからでも神崎だと分かる。構ってやりたいところだが、迷惑がられているのなら控えておこう。
「あいつ来週誕生日なのに、…」
盛大に祝ってやりたい、この気持ちはあいつに憎まれ口を叩かれるまで唇を噛みしめながら堪えよう。
………
……
…
「神崎くんさあー、何か最近姫ちゃんと絡んでないね?どうかした?」
「…別に」
「あれー?なんで急に冷めちゃうの?」
「もーっ!うるせぇ!今あいつの話題は出すな!!俺に構うなっ」
「変なのー」
………
……
…
駄目だ。このままではどうにかなってしまいそうだ。俺以外の奴とは普通に話しているのを見ると、神崎に軽蔑されているような気がして。
ギリ、と奥歯が軋む。俺の嫉妬心は酷い独占欲へと変わっていった。気が付いたら目の前には唖然とする神崎。俺が手首を力強く握っているからだ。俺は目を細めて神崎を睨む。夏目や城山もびっくりしていた。
「…離せ、姫川」
それでもなお冷酷な態度をとるのは、くだらない意地を張っているからだと俺は知っている。その意地がどこから来る意地なのかは知らないが。
来い、と低い声で言ってやればびくりと震える肩。それを無視して無理やり教室を出た。
「お前さ、なんで俺のこと避けてんの?」
「…べつに、」
「別にじゃねぇだろ。こっちも気分悪いんだよ」
「…」
誰もいない階段の踊場。神崎を壁に追いやって睨むとついに意地も崩れ、涙目になった。
「冷めたのか、俺に?」
「…っ、ちがう」
「じゃあ何でだよ…」
分かんねえよ、
俺が何かしたか?無意識に神崎の気に食わないことをやらかしたか?
ぐるぐると思考を巡らせても何も思い当たらねぇ。はー、情けない。俺も涙目になってきた。
「…悪い、感情的になり過ぎた」
「…いや、こっちこそごめん…。まさかお前にそんな思いをさせていた、なんて、」
「…」
自由になった手を神崎は俺の胸に当てた。そして、本当にごめん、の一言。もう良いよと俺は神崎を抱いた。
………
……
…
「──…神崎、お前誕生日だけど、」
「あ…。そんな、良いよ。迷惑掛けちまったし」
放課後、日も長くなりまだ昼間のように明るい17時。神崎と校門を出て俺は思い出したかのように隣を見た。すると隣の奴は申し訳なさそうな目をしながら笑った。
「…それに、もう満足したから」
「は?」
間抜けな声が出た。
「わざと冷たくして、お前の頭の中を俺でいっぱいにしたかった」
だからもう良いの、と目を細める神崎がとても愛しく思えた。
結局お前に溺れる12.0603
遅れました神崎くんおめでとーう\^^/
神崎くんが女々しくなっちゃうのは何故なんだろうね!とりあえず力尽きました!!orz!
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