銀八×保健医高杉
どっちかってーと、銀八←高杉っぽい






珍しく訪問者がいない、と思ったのは、じめじめと雨が降っている午後のことだった。
やっぱり生徒も昼寝するなら晴れた方が良いんだな、なんてぼんやりと雨を見つめていると扉を開ける音。振り返るとマスクで顔の半分を覆った銀髪があった。


「ベッド空いてる?」


第一声がこれだった。パスタ巻いてる?を思わせる響きに失笑しながらも俺は短く、あぁ、と返した。


「じゃあちょっと貸して」

「ざけんな。サボリは認めねーぞ」

「サボリなんかじゃねーって。ほら、何の為のマスクだと思う?」


自分の顔を指指しながら首を傾げる。
知らね。そう言いながら俺は奴に体温計を渡した。不思議そうな顔をする銀八。まさかこいつ、熱の計り方を知らねーんじゃねぇだろうな?


「いやいや俺もそこまで馬鹿じゃねぇから。ただ何で熱計んなきゃねーのかなって」

「完璧な馬鹿じゃねぇか。保健室に来て一発目にする事っつったら体温測定だろうが」

「あ、そなの?」


初めて知りましたと言わんばかりの口振りで体温計を受け取る。奴が熱を計っている間に俺は溜まっている仕事をすることにした。


先月の保健室訪問者数、主な体調不良、平均体温。目眩がするほどの文字列を眺めているとピピピと機械音が響いた。どうやら奴の体温を知らせる音のようだ。視線だけを奴に向けると体温計を揺らしてみせた。


「36.6℃」

「平熱じゃねぇか」

「ばっか。俺の平熱35℃代だぜ?1℃上がっただけでもうクラクラ」


ただ休みてぇだけだろ!と内心叫びつつも、そう言われちゃ返す言葉もねぇ。しぶしぶ俺は奴の為にベッドを作ってやった。


「30分だけだからな」

「ありがとー。高杉くん愛してる」


無意味な白衣を脱ぎながら恥ずかしげもなくそう言った。
奴の言葉に意味はない、と自分に言い聞かせながら軽く受け流した。


………
……



さて、そろそろ30分が経つが。


「、おい」

「…ん」


奴の胸に手を置いて揺らしてみたが間抜けな声しか返って来なかった。そしてたちまち聞こえてくる下品ないびき。
はー、と大きくため息を吐いてからまた銀髪を見た。眼鏡を外した顔も整ってやがんなァ畜生。いびきうるせーけど。

どこかもどかしい気持ちになり、もう一度胸に手を乗せ、マスク越しにキスをした。





雨の日恋愛









12.0507


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