02/06の日記

09:33
あいすべきあなたへ
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さよなら


さよなら


だいすきでした


きっともう二度と


会うこともないでしょう


わたしはさきに、


旅立ちます












「本当に、よかったのかしら」

今になってそんなことを思うのは、あの日にあなたが優しく微笑んでくれたから。

思い出したその人の唇から紡がれる言の葉は震えるほどに甘美で、頭の芯が溶けるほどに熱くなる。

そうして、私の意識はあなたに乗っ取られるのだわ。




…ダメだ。


これじゃあダメ。


こんなことでは決死の想いで出てきた意味がまるでないではないか。


「しっかりするのよ、私」


そのために、置き手紙だってかいたんじゃないか。


けほっと一つ咳が出た。


今ごろあなたは読んでいるかしら?私の想いを綴ったさよならの手紙。

もしも読んだなら、ビリビリとそれを破り捨てて。そうしたら、どうか私のことを忘れて下さい。




…私、本当に幸せだったわ。

毎日をあなたと過ごして、二人で約束をしたこと。

幼い日の煤けて古ぼけたような、それはもう随分昔の小さな約束だったけれど。


『ずっと、一緒にいよう』


ああ、そうよ。


あの時私は一生分の涙を流した気がする。


とても古いけれど、あれは子供の頃、病弱な私の心の拠り所、支えだった。


それがなくなってしまえば、私は生きていく自信がないのよ。心も体も弱い人間なのだわ、私。


げほげほと二つ、咳が出た。


知ってた。

本当はあなたが好きなのは誰なのか。

知ってた。

あなたは優しいから、体の弱い私を傷つけてしまわないようにしてたこと。



全部…知ってたわ。


(知らないふりをしたのは、あなたの優しさに甘えていたかったから。

ばれてしまえば私とあなたの関係はすぐに切れてしまう気がした。

……そんなはず、ないのにね
)



はやく、はやく歩かなきゃ。

せめて自分くらい、いなくなれば…

あの人は少しは楽になるんじゃないかしら?

死にたいなんて思わない。

でもそばにいられるほど強くもない。

だから、私は旅立ちました。


ごほっ、げほげほと三つ、咳が出た。




それから?

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