10/06の日記

17:55
雷桜      宇江佐真理
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「美しい」



この作品はこの言葉がよく似合う。





記念すべき第一弾は、
私が今まで読んだ中で一、二を争うくらい好きな作品、「雷桜」。



歴史小説の部類にあるのに、そんなことはもう二の次っていうくらい、のめり込んで読んでしまう。


「身分違いの叶わぬ恋」。

一言で表すなら、まさにこの言葉。


この作品、特に女性に読んでもらいたい。

読み進むにつれて、途中で栞をはさむことすらできなくなります。

その時間、瞬間すら惜しい。


私が初めて読んだのは十五の時...二年前なんですが、未だに読み返します。

何度も何度もね。






さて、少し内容に触れます。


時代は江戸時代後期だと思われます。

主人公...は、多分二人とも主人公と言っていいと思うのだけれど...。


まず、将軍徳川家斉の十七男・清水斉道。

それから、瀬田村の庄屋の娘・遊。

二人は全く違う世界で育ちました。


斉道は四歳で生母・お遊の方や、同母の姉・賢姫と別れて、御三卿・清水家の当主に。

将軍の子として生まれた重圧か、幼くして母たちと離れたさびしさか、彼は気の病・発疳になってしまう。


そんな時、彼は夜伽の番をしていた榊原秀之助を斬りつけるという事件を起こしてしまう。

誰も止めに入れない中、中間をしていた遊の次兄、瀬田助次郎が止めに入る。

これを見た清水家御用人・榎戸角之進は彼を正式に武士に取り立て、清水家に仕えさせた。

初めは助次郎に百姓だ何だと気に食わない態度を見せていた斉道だが、
助次郎から遊の話を聞くようになって、関係は改善していく。



一方の遊は、江戸から三日ほどの所にある瀬田村の庄屋・瀬田助左衛門の娘で、
赤ん坊のころ、初節句の夜に何者かにさらわれてしまう。

探しても探しても彼女は見つからず、誰もが生存を諦めていたが、奇跡的に里帰りの途中の助次郎と再会。
どうやら彼女は育ての父と共に、磁場の狂った山、瀬田村に住んでいる様子。

しばらくして、育ての親の失踪により、遊は生家・瀬田家へ戻る。



キーパーソンは、助次郎さんな訳です。

彼が斉道に遊の話をしなかったら、遊と再会しなかったら、二人は一生出逢うことはなかった訳です。


やがて病の静養のために、斉道は瀬田村に行きたいと、遊のいる瀬田村を訪れる。

そこでやっと二人は出逢う訳です!

ここにたどり着くまでに、文庫本だと240ページ!!
しかも出逢うのは井戸端。。。



そして、徐々に二人は惹かれあいます。

そんなある日、助左衛門を陥れようとする連中の罠で、斉道や榎戸、助次郎、村人の寅吉は瀬田山で迷ってしまう。

そんな時助けに来た遊に、斉道は思わず
「そちが愛しい」
と漏らしてしまう。


そんなこんなで想いが通じ合った二人。


しかし、斉道には父・家斉から御三家・紀州徳川藩主として現藩主の娘・菊姫との縁談が。

しかも、一農民の娘が、斉道の妻になれる道理はなく...。



斉道が江戸へ帰る前日、二人は瀬田山の遊の塒で結ばれます。


そのあと、遊がさらわれた夜、雷に打たれた桜・雷桜の前で二人を待っていた榎戸と助次郎。

帰ってきた二人の姿に、榎戸はぽろっと漏らします。

「遊を江戸に連れてゆけたらいいのだが...」



しかし、結局二人はその後、共に生きることはできませんでした。

菊姫と結婚し、もう会えないと告げる斉道に、
遊は自分のことも村のこともすべて忘れろ、と告げ、冷たく突き放す。

側女として共にいてくれと言う斉道の言葉も聞き入れなかった。

この辺、読んでいてとても辛いです。

斉道の立場も辛さも、哀しみもわかるし、遊の苦しさ、絶望、哀しさもわかってしまうから、
もう号泣です.............。。。


そうして、斉道が去った後、遊は家に仕える下男・吾作の言葉に、妊娠に気づきます。

しかし、そのことは決して斉道には知らせなかった。


娘の意図を知った母・たえも、彼女の意思を尊重。

斉道の御落胤・助三郎は、遊の長兄・助太郎とその妻・初の養子となる。


一方、菊姫と結婚した斉道は、やはりというか何というか、遊のいないことに寂しさを感じていました。

しかも藩の実権は舅である前藩主・治房が握ったまま。

そして菊姫との間に授かった二人の子は、皆死んでしまった。

晩年にやっと側室を取るが、一子・慶福が生まれる前に斉道は逝去。
享年、三十七。

最期の言葉は
「遊、遊はどこじゃ」

彼は死ぬまで遊を想っていたのです。

ここもかなり泣きました。


初めて恋をした女性と結ばれることなく、一生を終えた斉道。




そして、斉道の死から数年。

家督を息子に譲った榎戸は、江戸から紀州までの旅の途中、二十五年ぶりに瀬田村へ。

そこで彼は初めて助三郎を知り、出逢う。

助三郎は斉道に瓜二つだった。

彼に案内されて、榎戸は遊の住む瀬田山の庵へ。

二人は再開し、助三郎の出生についての話や、昔話をする。


そして、榎戸は斉道の墓参りのために紀州へと旅立った。。。



ってな感じで終わります。

物語すべて読み終えて、私の顔はぐちゃぐちゃ。
泣きに泣きました。


次の日学校で、目を腫らした私に友達はびっくりしてました。

なので、これは電車や学校など、人のいるところでは読まない事をお勧めしたい本です。

一人静かに、休日や就寝前に読むことをお勧めします。


私の一番好きなシーンは、二人の幸せの絶頂(?)とも言える、291ページ。

後の展開を考えると、堪らなく切なくなります。


とっても美しく、切なく、哀しい恋の物語です。


もうこれ以上の恋愛作品に出逢うことはないだろうとすら思いました。




ぜひ読んでください。。。

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16:13
はじめに。。。
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ここでは日記ではなく、私の読んだ本の紹介、

また、本の感想などを綴っていきます。



少しでも皆さんの本選びの参考になればいいなぁ...なんて。。。

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