物書き置き


□透明と君の暮らし(未完成)
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 少し壊れた椅子に、私は座っていた。
 私は幽霊。性別は女。年齢は、多分16歳。白いワンピースを着ている。髪は黒の短髪。素足。でも寒くない。だって、幽霊だから。
 いつ、どうやって、どこで死んだのかは覚えていない。ただ、気付いたら見知らぬ部屋にいた。六畳くらいの広さだった。椅子の右側には布団、左側にはサイドボードがあり、文庫本で一杯になったラックや小さなタンス、勉強机と椅子が置いてあった。適度に掃除はしているようで、汚れは目立たなかった。もし主が認めてくれたら、私はここに居座るだろう。他に行く宛てが無かったのと、この椅子の具合が私を落ち着かせた。
 「ただいま〜っと。」主が帰ってきた。一目見ると、そんなに害はなさそうな青年だった。年齢は私より少しばかり年上に見えた。顔は普通より下。イケメンではない。そんなことはどうでもよかった。黒いリュックをタンスの上に置いた。
 「……誰かいるのかな。」びっくりした。まさか、私が見えるのかと思った。椅子に座ったまま、私は固まってしまった。
 「気のせいだよな。それよりもご飯食べなきゃ。」部屋を出ていった。ほっとした。
 私はなぜ、ここにいるのだろう。人は死んだら、天国か地獄に行くのではないのか。まさか、未練があって現世に残ってしまったのか。よく分からない。ただ、分かっていることは、私はこの部屋からいかなる手段を使っても出れそうにないことだけだった。
 これから、主とどう付き合っていくか。電気が消えた暗い部屋で考えていた。
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