一次創作
□徒然小説@
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「お〜い、どうした〜?」
僕の幼なじみである叶栄華が話しかけてきた。
「どうしたって、なにが?」
それに僕はそっけなく返した。
「ん、なんかいつもと違うから。つい。」
彼女の言葉に僕は何も返さなかった。
理由は判っている。だけど、それが彼女の前では言えなくて、僕は黙るしかなかった。
そんな態度に彼女は「ふ〜ん」とだけ返し、あとは僕の横を歩く。いつもと同じように。
小学、中学、高校と僕達はいつも同じ学校だった。そして、当たり前のように一緒に学校に行き、一緒に家に帰ってきた。僕達にとってそれは三度の飯よりも当たり前のことだったのだ。
だけど、それも終わる。
夕焼けの中で一緒に帰るのは多分、今日で最後となるだろう。
「今日ね〜私良いことがあったんだ〜」
ふいに僕の前に周り、幸せそうな笑顔を向けた。
その輝かしい顔に、僕は何も言わずに眼を剃らした。
なんでこんなことになったんだろう。
初めてだ。彼女との帰路がこんなにも悲しい思ったことなんて。
もう彼女の横を歩くのは僕じゃない。一緒にいるのはもう出来ない。
そのことがこんなにも辛いことだったなんて。
僕がこれほど彼女に想いを募らせていたなんて、それこそ思いも寄らなかった。
こんなのは…嫌だ。
「ねぇ、あの…さ。」
少しの勇気を振り絞り、僕は声をかけた。
言おう、彼女に。僕の気持ちを全て。
そう思った。
だけど、
「なに?」
振り返った彼女の笑顔に僕は何も言えなくなった。
数秒の沈黙の後、先に動いたのは彼女だった。
「変なの〜」
そう言って、僕の前を歩き出す。
夕日に照らされた彼女が眩しくて、僕は見失なわないようにその背中に手を伸ばした。
だけどそれが届くことはなく、そしてこれからもそれは届くことはない。
此までのことがの白昼夢だったのか、彼女の姿は僕の前から消え失せた。
夕焼けの空に映ったものは何もなかった。