二次創作
□【お兄ちゃん】
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「え〜と、今日はどういったご用件でしょうか?」
「何や自分、用がなければ来ちゃいけんちゅうんかぁ?」
「いえ、別にそういうわけでは…」
「ハハハ…」と苦笑いを浮かべる。
さっきいきなり後ろからハリセンでツッコまれて、そのリアクションの無さに更にもう一発くらったのだ。
余り良い印象を受けないのは至極当然のことだろう。
だが、それも仕方がないと諦める。
愛沢咲夜という人は生粋の関西人で、笑いに対しての執着は人二倍以上なのだ。
そんな人物に「ツッコミせんといて下さい」というものなら「何でやねんボケー」とハリセンの鋭い一発が返ってくるだろう。
因みに今、咲夜は制服を着ている。土曜は午前中だけで家に寄らずに直接この三千院家に来たそうだ。
「まぁ、用ちゅう用じゃないんやけど…いや、あるかな」
「?」
突然の態度の変化に困惑する。
恥ずかしいのか。
モジモジと制服のリボンをいじり、頬を朱に染めていた。
「えっと、なんでしょう?」
「あんな、自分に頼みたいことがあんねん」
小さく小さく呟いたその言葉には、絹のような繊細な気持ちが含まれてあった。
「誕生日にウチ言うたやんか、『お兄ちゃんに憧れている』って。」
確かに言われた。
自分に対する咲夜の呼び方のことだった。その時モジモジ言われた『ハヤテお兄ちゃん』には流石に何とも言えない恥ずかしさを感じた。
「はぁ」
「はぁ、ちゃうわ!」
バシ〜ン
ホームランを打てそうな見事な構えから一直線にボール(頭)に当てた。
痛い、と頭を押さえるハヤテに咲夜はビジっと人差し指を向け、胸をはってハヤテを見据える。
「前にも言うたやんか。少しはウチのか弱い乙女心を理解せんかっちゅうねん!」
「すみません。そういうのはほんと苦手で」
「ハァ〜」と大げさに溜め息をついた。全くこの借金執事はどんだけ鈍ければいがすんねん。
ほんま、この借金は…
ほんまに…
「さ、咲夜さん…」
「あんな……」
思むろに開いたその口から発せられた言葉にハヤテの思考が数秒間停止した。