SPIRIT

□番外編 帰ってきた孫娘
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「あの…どちら様でしょうか…旦那様とのお約束は…」
「桐生総一郎の娘、海月・ディーヴァです…お約束も取り付けずに申し訳ありません…桐生会長にお会いしたいのですが…」

突然の来客だった…
私の息子は、高校の時後のハリウッド女優、ジェシカ・マリナーと恋をし、進路を決める際にアメリカの1流大学で勉強したいと言った息子に対し、
桐生の掟があるからと許さなかった…その後息子は駆け落ち同然にアメリカへと行き、その後デビューしたジェシカと結婚し、2人の双子の兄妹が生まれた…

「旦那様…お客様がお見えですが…」
「誰だ…今日は誰ともアポを取ってはいない筈だが…」

そして10年前、音信普通だった息子総一郎から1通の写真入の手紙が届いた…
『同封しました写真は、現在旅行中に映した物です…双子の兄と妹、聡と海月です。』
それが総一郎から届いた最初で最後の手紙になったが…今でもその写真は私の寝所に飾られている…
しかしその旅行の最中…事故により総一郎とジェシカはまだ幼い2人の兄妹を残し、他界してしまった…そう10年前の今日である…

「他界されたご長男、総一郎様の娘と申しているようですが…名前は海月・ディーヴァ…」
「何だと!!!」
「いかが致しましょう…」
「直ぐに通せ…私の下へ連れてくるのだ…」

息子夫婦の事故の後、孫である聡と海月は総一郎の親友である警視総監に引き取られた…
もちろん私が引き取りたいと申し出たが…
総一郎の遺言で、2人を桐生の仕来たりに縛られて育てたくはないと言う事を聞き、諦めた…

だが、いつかは孫に会いたいと言う気持ちは変わらなかった…

2人はその後、9歳という幼さでアメリカの大学院を卒業し、ロス警察の特殊捜査官として働いている事は知っていた…
しかし、中々日本に来る機会はなかったようで、会えぬまま10年の歳月が流れたのであった…

「旦那様お連れ致しました…」

桐生家専属の着付け役の後ろにいる少女を見上げる…確かに幼い頃のジェシカにそっくりだった。
18歳にしては発育不良のようだが…

「今までアメリカにおりましたので、ご挨拶も出来ずに申し訳ありません…」
「海月だったな…なぜ日本に…聡は一緒ではないのか…」

その言葉に海月はうつむき、暫く沈黙した後口を開いた…
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