紅血鬼宮
□プロローグ
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闇に閉ざされた部屋。
うっすらと白んだ外からの光が、窓から入り込む。
その光は部屋の中を朧に照らし、新しい朝がもうすぐやって来ることを告げていた。
と、闇に紛れていた人影が動いた。
ボタボタボタ……
闇が動くのと同時に、大量の液体が重々しく落ちる音がする。
闇より深い色の液体は、大雨が上がった後のグラウンドのように床に溜っており、更に壁や家具、布団、障子、畳……
部屋の隅々に液体が飛び散っていた。
そして動く人影とは別に、闇と同化している人影が二つ。
しかしその人影はピクリとも動くことはない。
うごめく人影はその動かない人影に覆いかぶさり、奇妙に動いていた。
そして何かをし終わったのか、顔をユラリと上げた。
「グはッ……もっと……ヒャは………もっと──を……」
そこで沈黙が続いた。
どれぐらい時間が経ったのか。
急に、
「あ゛…ぁ゛……
あ゛あぁぁぁぁああ゛ぁぁ゛───」
人影は頭を抱え絶叫を上げながら、慌てて部屋から出て行った。
まだ日が昇っていない空は薄暗く、月が西に沈もうとしていた。
今日も、一日がはじまる。
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