紅血鬼宮
□第二話/血の逃走劇
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ニイィ
「なーんてな」
「!?」
鈴木はいつものやんちゃでかわいい顔から、
口の端をつり上げ、邪悪な喜びをした笑みに変貌した。
声も、活発で優しいものから、どす黒い声になっていた。
鈴木の醜い笑顔。
口が開かれ、二本の鋭い牙が小夜の首筋に───
体が恐怖で動かない。
もう、無理だ……
目を思いっきり瞑った、
時だった。
誰かが横から鈴木に体当たりをした。
鈴木は床に倒れる。
「小林、大丈夫か!?」
もうひとりのクラスのおちゃらけ、斎藤だった。
「さ、斎藤君!」
「もうこいつは鈴木じゃねぇ、鈴木の形をした化けもんだ!」
倒れた鈴木が体を起こそうと床に手を付く。
「さ、早く逃げよう!」
小夜は斎藤に手を引かれ、その場を後にした。
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