太陽ノ教団

□太陽の教会〜番外〜
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「おじさん…!!」
目の前までダニエルがたどり着くと、
ゴルドの父親は、皺の刻まれた顔に更に皺を寄せて笑った。
「…ダニエル君。
生きていたんだね…。

きっと神様のご加護があったからだね…」

神様、という言葉にダニエルの胸が締め付けられた。

「そ…そんな事、今はいいよ!
早くここから出ようおじさん!
俺、手を貸すからさ!!」
叫ぶ度、傷口が痛む。
それでも彼は、
残された村の生き残りへと手を伸ばす。

飛び散った火の粉が、
遠くに投げ出された男の杖へと燃え移った。

「有り難うダニエル君。でもね…せっかく会えた所悪いけれど…おじさんの足はもう動かないんだよ。

だから…君だけでも先に逃げておくれ。」

火は更に広がる

「でも!!」

「ダニエル君…
君は優しい子だ。
きっと辛いだろう…
でも、安心しておくれ…
おじさんはね、君を守るように神様に頼んでくるだけだからね…」

「いいよおじさん!!もういいよ!!
……わかったよ!!
俺…行くからさ…だから」

もうこれ以上聞いていられなかった。

神という言葉も。
彼の言葉も。

せっかく助けられると思ったのに!!

一人じゃないと思ったのに!!

無力だから…助けられない。
無力だから…見つけられない。

力が…力があったなら…!

「…だから…神様に言っといて…
俺、アンタのとこには意地でも行かないって!!」
男はただ黙ってそれを聞いていた。
そして、言った。

「…それでいいんだよ。ダニエル君。

そうだ…最後にひとつ…お願いしてもいいかい?」
「うん…何…?」

男はさっきまでの優しい眼差しを、真剣な眼差しへと変え、ダニエルを見据えた。

「息子を頼む。

私にはわかるんだ…きっとあの子は生きているってね。

けれど、あの子は怖がりだ…きっと、今もどこかで、一人で震えてるだろうから。

だからこれは君だけにしか頼めない…

いいかい?」

ダニエルは、男の眼差しをしっかりと受け止め
力強く頷いた。

「おじさん、約束するよ。
俺にまかせて…!!
男に二言は無いからさっ!」
無理に笑顔を作りながら、ダニエルは言った。

「有難う…」

男が微笑むのと、
火が建物を更に包もうとするのはほぼ同時だった。
「さあ…ここも危ない…行くんだ!!
振り向かずに!!」

少年は頷いた。
頷くときに、涙が数粒零れた。

そして、その場を離れていくのを見守ると…
男は力無く呟いたのだった。
「最後に会えんとはな…
親不孝ものめ……」

と。




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