伽話

□水底の龍と配下
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北の海の底には漆黒の龍が住むという。
名を驪竜、
首に五色の光を宿す宝珠を持つその龍は
月明かりの無い新月の夜にだけ
その姿を表すと言われている…


そして舞台は海底の竜宮城…

赤い甲殻に身を包んだ人ならざる風貌の門番が守る扉の更に奥…主の間。

主たる黒龍、驪竜とその眷族たる水虎。
竜宮城の蒼い空間に二つの黒い影が映る…

「それで、首尾はどうなのだ?」
驪竜は童子の姿で玉座へと座り、頬杖をつき
さして期待をしている訳でも無い冷たい眼差しを眼前の配下へと送る。

その視線を受け取ると、配下である水虎は誇らしげに胸を張り
「は。上々であります!!
この水虎、各地にてこれは!と思う娘の家に驪竜様の証たる黒羽の矢を立てて参りましたァ!!!

それはもう選り取り見取りのハーレムパラダイス!
今年こそ驪竜様に相応しい后が居るに違いないでありますっ
水虎はやれば出来る子でありますからして!
それはもうたっぷりと褒美を頂きたい所存であります☆」

「それは次の新月の夜を越えてからだ…
しかし選り取り見取り…か。
例えばどのような娘が居るのだ?」

僅かばかりに興味を示した驪竜は水虎を赤い瞳で見つめた。
「例えばでありますか〜…」
水虎は自分が選んだ娘を思い出そうと記憶を漁る。
「あ!まず茶屋の娘であります!」
「庶民の娘か…まあいい。
どのような娘なのだ?」
「いやぁ、それが…
水虎が嫁探しをサボっていた団子を食べてたところ
サービスでもうひとつ団子をオマケしてくれた優しい娘さんでありまして!…あ」
「ほう…」

明らかに失言してしまった水虎をとらえる瞳は深海よりも冷たい…
「あ、あややや!今のは冗談であります!!
結局さっきの娘さんはあまりにいい子だったから勿体なくて矢は立てなかったでありますしっ…
Σしまったァ!!」

「ほほぅ…勿体…無いと…」

「違うであります違うであります!!!
そうそう!思い出しましたであります!
デラべっぴんな娘!!」
「その言い方はやめろ…uU
まぁいい。聞いてやる…」

「その娘…いや女は黒く長い艶やかな髪をしておりまして…
何よりもうボン☆キュ☆ボンのだいなまいつぼでーなのであります!!」

「だ…だいなまいつ…!?」

「しかもその肉体を外だというのに超露わにしてたであります!!」
「それは捕まるのではないだろうか」

「それに凄い酔っ払ってたであります!!酒ですぐへべれけになる驪竜様にはピッタリな……は、はひをふふへはひはふは(な、なにをするでありますか)」

突如として口をぎゅっと挟まれ、
水虎は間の抜けた返答を返す事となる。
「酒のことは言うな。
もういい…十分だ。やはりお前と話していると頭が痛くなる…下がれ」

「なんと!!じゃあ痛み止めを」

「だからそうではないと言ってるだろうが!!」

ちなみにこの時、
水虎も驪竜も気付いていなかったのである…

候補にした娘が
娘と言っていいのかわからないレベルの蜘蛛の妖だとは…
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