伽話

□水底の龍と配下
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月明かりすら届かない
深い 深い 水の底


ゆらゆらと揺れる龍灯が
ぼんやりと闇の中に沈む御殿を映し出す

その御殿へと向かう一つの影…

巨大な扉はゆっくりと開くと

その影を迎え入れた

御殿の中は不思議な結界が張られているのか
水中だというのに地上と同じ状態だった
先程の影の正体は
何かの印を切り、水を払うと歩き出した
道中何人かの
人ならざる使いの者達がいたが

その影を見るや
一礼と共に奥へと通していく…

やがて
幾度目かの豪奢な作りの扉が開かれ

荘厳な空気が漂う
大きな部屋へと影は辿り着いた


「何奴か」

部屋の際奥に存在する御簾から
その声は聞こえてきた

御簾の奥こそ伺えないが、
そこに移る影はまさしく巨大な竜影

その人物を前に、
来訪した影はびしっと敬礼の形を取ると言った
「御前様!!
竜宮城贄捜索隊隊長の水虎、
ただいま戻りましたであります!!!」


「ふむ…水虎か。
成果はどうだった?」

「はっ、それが…
人間共の妨害と抵抗に会いまして!
やむなく帰還してきた次第であります!!」
水虎と名乗ったまだ幼さを漂わせる少年は
報告を終え、誇らしげに胸をはった

「堂々と失敗宣言をするな…uU」
御簾の奥の人物は溜め息をつく

「お前につけた部下共の姿が見えないが……」

「は、その事でございますか」
主からの視線を水虎は受け止め
先程の誠実そうな表情とは打って変わった邪悪な笑みを浮かべると言った

「彼等の大半は抵抗する人間に殺されたであります。

しかしながらにあのような軟弱者共は竜宮には不要かつ不適合であると水虎は思い、
水虎自らの爪で人間共々血祭りにしてやったであります☆」
にこ!と笑う水虎に
竜影はやれやれと言わんばかりに
「…またか…」
と呟いた

「は!
またであります!」

「愚か者め、
貴重な贄の候補ごとやりおって…」

「次こそは必ずやご期待に添えますよう努力するであります!」

再びびしぃっと敬礼をとる水虎に

「もう良い、下がれ…お前と話していると耳が痛くなる」

「なんと!!
それはまずいであります
直ちに痛み止めを取ってこなくてはっ」

「そういう意味ではない!!」

広い部屋に否定の叫びが響き渡ったのだった……



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