捻れた本

□ある晴れた日の狂気
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――7月中旬

あれ以来、彼女と私は頻繁に会うようになっていきました。

えぇ、なぜだか彼女とはとても話があうのですよ。
趣味も、嗜好も。
偶然というには出来過ぎているくらいにね…。

まるで彼女が私に合わせでもしているようです。
まぁそうだとしても、
あの時の私は気付きもしなかったでしょうね。

美しく聡明な印象の彼女の存在に惹かれている事に違いは無いのですし、
それに、
私に接触を取り続ける理由も見当がつかなかったのですから…
ま、当時の私はですけどね。

今となってはわかりますよ。

彼女は私の研究成果が目的だったのです。

学院一の美女である上に、才女であった彼女。

その完璧さには勿論、
裏があった。と言う訳ですよ。
手段はどうあれ、彼女は学院という囲いの中で、一番に輝きたかったのでしょうね。

まぁ、そんな事を知らない当時の私は
彼女と共に居る内に
様々な成果や資料を横領されていった訳です。


それに気付いたのは
彼女が標的を私から別の院生に変えてからの事でした。
色々な意味で気のいい友人が私にそっと教えてくれたのです。
彼がそうしなければ
鈍かった私は気付きもしなかったでしょう。
彼女との予定が全く合わない事に。

彼女は私という容器から必要なものを全て出したところで、
空の容器を捨てて、
新しい満たされた容器を求めました。



利用された、という事実はやはり悲しいものです。
しかし、私にとって
それよりも残念なのは彼女と会う時間が無くなってしまった事。

あぁ、何度も言いますが恋や愛の類ではありませんよ。

これは知的好奇心なんです。
知的好奇心。

彼女が何に関心をもつか、どんな話しをするか、些細な癖、仕草…

そういったものが知りたくて知りたくて仕方なかっただけなのですよ。
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